<検証>高齢者だけが貧しいのか?メディアで飛び交う“貧困”報道、本当に困っている人に支援は届いているのか


【図表】高齢世帯と現役世帯どちらが〝貧しい〟のか?

 厚生労働省「毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)」によると、25年3月も、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で2.1%減少し、3カ月連続でマイナスとなっている。政府の思惑とは裏腹に物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状況から抜け出せていない。

 一方、年金受給世代は、04年のいわゆる「100年安心プラン」で導入されたマクロ経済スライドによって名目額が物価上昇ほどには増えないルールとされたため、実質年金額は目減りしている。実際、25年度の年金改定率は原則1.9%の引き上げとなっているが、内閣府の経済見通しによれば、消費者物価(総合)は2.0%の上昇と見込まれており、実質で見た年金は0.1%のマイナス改定となる。

 このように、物価上昇は、現役世代、高齢世代問わず、全ての日本国民を貧しくさせている。

 こうした経済的な苦境の中、25年は5年に一度の年金制度改革の年でもあり、とりわけ、メディアでは、年金生活者の窮状がフォーカスされ、高齢者も「年金だけでは暮らしていけない」と視聴者やその向こうにいるであろう政治家に強く訴えている。

 年金制度は、元々、年金だけで生活していけるだけの金額を約束するものとして制度設計されているものではなく、年金だけで暮らしていけないのはある意味当然だ。そもそも、生活水準はその人のこれまでの有り様や、置かれた境遇など、人によって様々なので、いくらなら十分という、万人が納得できる金額は存在しない。あるとすれば、最低限の生活水準だろう。

 生活費に対して年金が十分でないのであれば、金融資産の取り崩しや実物資産の売却で補填する必要がある。そうした資産を持ち合わせていない場合にも生活保護というセーフティーネットが存在している。

 本記事では、年金を受給する高齢世帯の所得階層別の暮らしぶりを検証してみたい。さらに、現役世帯と比較し、年金を受給する高齢世帯の生活が特に厳しい状況にあるのか、あわせて検証してみる。



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