静岡県伊東市の田久保真紀市長に持ち上がった学歴問題を巡り、弁護士の紀藤正樹氏が自身のX(旧ツイッター)で厳しい見解を示した。市長がこれまで市の広報誌などで「東洋大学法学部卒業」と紹介していた経歴に疑義が呈され、波紋が広がっている件だ。
学歴問題の経緯と市長の説明
問題は、田久保真紀市長(55)が、自身の経歴として「東洋大学法学部卒業」と公表していたことに対し、市議会などから事実関係を問う声が上がったことに端を発する。
市長は今月2日に会見を開き、自身のプロフィルについて「東洋大学に確認したところ除籍であることが判明した」と説明した。市長によれば、6月末に自ら大学へ赴き、卒業証明書を取得しようとした際に初めて除籍の事実を把握したという。「卒業していると認識していた。戸惑っている」と述べ、学歴詐称の意図はなかったと釈明した。
市議会の動きと辞職勧告決議案
伊東市議会では、この学歴問題を巡って「学歴詐称にあたるのではないか」との指摘が出ており、市長の責任を問う動きが進んでいる。
市議会の議会運営委員会は4日、田久保市長に対する辞職勧告決議案の取り扱いについて協議を行った。この決議案は、現在開会中の6月定例会の最終日である7月7日に本会議で採決される見通しとなっている。また、議会運営委員会では、市長の説明責任をさらに追及するため、地方自治法第100条に基づき設置される調査特別委員会(百条委員会)の設置に関しても協議が進められている。百条委員会は、正当な理由なく議会の要求する資料提出や証言を拒否したり、虚偽の証言をしたりした場合に罰則が科される強い権限を持つ委員会である。
伊東市長の学歴問題について見解を述べる弁護士の紀藤正樹氏
紀藤弁護士の厳しい指摘
一連の状況に対し、弁護士の紀藤正樹氏は自身のXアカウントを更新し、厳しい見解を表明した。紀藤氏はまず、「卒業か除籍かが本人にわからないこと自体がありえない」と、市長の「卒業していると認識していた」という説明に対し強い疑問を呈した。
さらに紀藤氏は、この問題は単なる経歴訂正にとどまらない可能性を示唆し、「強制捜査もあり得る事態です」と述べ、捜査当局による介入の可能性に言及した。
加えて、紀藤氏は、市長が過去に市議会議員などに対し提示したとされる“卒業証書”についても触れ、「補足ですが、伊藤市長が、議長らにちらみさせた“卒業証書”が仮に偽造された“卒業証書”だったとすれば、公職選挙法違反だけでなく私文書偽造罪の疑惑もあります」と指摘した。これは、もし提示された証書が偽造であった場合、公職選挙法における虚偽事項公表罪などに加え、より重い私文書偽造罪に問われる可能性もあるという、深刻な法的側面を提起するものである。
今後の焦点
伊東市長の学歴問題は、市長本人の認識の食い違い、それに対する市議会の厳しい追及、そして外部の専門家である紀藤弁護士からの法的な観点を含めた指摘が複雑に絡み合っている。今後の市議会での辞職勧告決議案の採決や、百条委員会の設置の行方、そして紀藤弁護士が言及したような法的側面の進展が注目される。