なぜ給食「無償化」で格差くっきり? 渋谷区ではキンメダイ、ある自治体はサケの代わりにサメや深海魚でしのぐ


【写真】物価高でもゴージャス! タラやキンメダイが並ぶ渋谷区の給食

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■牛肉より豚こま、鮭よりサメ「1食300円」の現実

「物価がどんどん上がっているのに、給食費が追いついていない感じがします」

 こう話すのは、東京の区立小学校に勤める栄養士・中山美咲さん(仮名)。中山さんは給食の「やりくり」に日々苦労している。3年ほどの間に食料の消費者物価指数は約2割上昇したが、給食にかけられる単価は変わらないからだ。

 たとえば、肉なら牛肉は使わずに豚こま肉か鶏肉を選ぶ。料理によっては鶏もも肉よりも安価な鶏むね肉を使うなどして、節約する。

「魚は、子どもたちが名前を知っているサケなどを出したいのですが、比較的安い『サゴシ』(サワラの未成魚)を使ったりします」(中山さん)

 以前は定番だった冷凍切り身魚の「メルルーサ」も値上がりしたため、より安価な「ホキ」を多用するようになった。どちらも外国産の深海魚だ。サメ肉を使うこともある。

 野菜の値上がりも痛手だ。特に春先は天候不順で野菜の価格が前年度の約1.5倍になった。

「どれか一つだけ値段が高いのなら他の野菜に切り替えればすみますが、これだけいろいろ高くなってしまうと難しい。給食でよく使うタマネギとニンジンが値上がりしているのはすごく痛い」(同)

■自治体が給食費を肩代わりしただけ

 学校給食法は、給食費(材料費)を保護者が負担すると定めている。その給食が無償化されたのになぜ、と思う人はいるかもしれない。

 無償化したからといって、自由に給食にお金をかけられるわけではない。同法が定めている、保護者が負担するはずの給食費を自治体が公費で負担しているだけだからだ。

 給食にかけられるお金は、自治体ごとに予算として計上されている。その予算内で、文部科学省が定める「学校給食摂取基準」のカロリーや栄養素を満たすべく、自治体の栄養士たちは奮闘している。

 数年前、中山さんの働く自治体は給食無償化に踏み切った。給食1食あたりの単価は約300円で、それ以前と変わらない。23区内では給食にかけられる費用が最も安い区の一つだ。



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