石川県が突然「米原ルート」文書配布 北陸新幹線延伸全国大会


【写真でたっぷり】24年3月、金沢-敦賀間が延伸開業した北陸新幹線

 東京から大阪まで北陸新幹線沿線10都府県で構成する「北陸新幹線建設促進同盟会」の総会と毎年春秋に開催される建設促進大会を兼ねており、今回は北陸3県知事と関西広域連合トップの三日月大造・滋賀県知事、京都、大阪両府副知事が出席。北陸・関西の経済団体トップやJR西日本の長谷川一明社長も参加した。

 事前の事務方協議で、石川県から「米原ルート検討」を決議文に盛り込む提案があったことで、今年は高い注目を集めた。冒頭のあいさつで、杉本達治・福井県知事は約9分間で3回、「小浜・京都ルート」と声を張り、同県内を横断する現行計画が決定事項だとアピール。与党側の責任者を務めてきた京都選出の西田昌司参院議員も「コースは既に決まっている。これからどうのこうのという話はあり得ない」と語気を強めた。

 しかしその後、司会者が「ただ今、石川県から資料配布の申し出がありました」と告げると、会場がざわめく中、石川県職員が「小浜・京都ルートに大きな課題が明らかになる場合、米原ルートも含め、検討を」などと書かれた2024年7月の「石川県民会議決議」を配布。馳浩・同県知事は立ち上がって、この日の最終決議には賛同するとしつつも、現在の想定ルートが京都府市民の同意を得られるかなど課題が多いと説明した。

 続いて演説に立った新田八朗・富山県知事が「沿線が一致団結して求めてきた小浜ルートでの全線整備を堅持すべきだ」と指摘。経済団体などからも賛同意見が相次ぎ、小浜ルート案に決まった経緯や「一日も早い全線整備を」とする大会決議文を拍手で了承した。

 会場ではやじが飛ぶ場面はなく、大会後は例年通り国への要望活動を実施。ただ、大会決議採択時に石川県側の出席者が退席する場面もあり、議論の火種を残す形になった。

 ◇各首長の思惑さまざま

 北陸新幹線の大阪延伸の実現に向けては、京都府を中心に現行計画の「小浜・京都ルート」へ不安が広がる中、沿線自治体の首長らの対応も焦点となっている。石川県を中心に、福井県敦賀市から滋賀県米原市につなぐ「米原ルート」の待望論が盛り上がる中、各府県はどう対応するのか。

 三日月大造・同県知事は、近畿2府4県と4政令市、鳥取、徳島両県でつくる関西広域連合のトップも務め、小浜ルートを推してきた。「米原推し」のラブコールを石川県側から送られている形だが、三日月知事はこの日の大会でも「米原ルートは望んでも、求めてもおりません」と明言。終了後にも毎日新聞の取材に対し、検討の余地については「無い」と繰り返した。

 京都府の西脇隆俊知事については、出席した武田一寧副知事がメッセージを代読。国などによる府内自治体向けの説明会が3月に始まったことを指摘し、「府民の納得と理解が不可欠。地下水の問題など施工上の課題に引き続き丁寧な説明を」と求めた。

 大会では、石川県が会場で「米原ルートの検討」も求める資料を配布した。配布を認めるかどうかは、開始直前まで馳浩・石川県知事と杉本達治・福井県知事が直接交渉して決めたという。

 杉本知事は終了後、報道陣に対し「県民の意見として紹介したいと(馳知事が)おっしゃったので、了承した」と説明。小浜ルートの堅持が認められたことについて、「ほとんどの皆さんが、これで進めていこうと熱意を持たれており、安心した」と安堵(あんど)した様子も見せた。

 馳知事も報道陣に対し、北陸新幹線の大阪までの延伸が必要不可欠だと改めて力説。その上で、建設費などの問題も指摘し、「京都府市民の理解が必要で、極めて大きなハードルがある、と申し上げたい」と険しい表情を見せた。【竹中拓実】



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