元タレントの中居正広氏と元女性アナウンサーとのトラブルについて、今年3月、フジテレビが設置した第三者委員会は「性暴力による被害を受けたもの」と認定しました。
【写真を見る】フジ第三者委の報告から1か月半…中居氏側が反論した3つのポイントは?
これについて、中居氏の代理人に新たに就任した弁護士らが5月12日、「『性暴力』という日本語から一般的に想起される、暴力的または強制的な性的行為の実態は確認されなかった」と反論しました。
報告書の公表から約1か月半…第三者委員会に反論した中居氏側の意図は?今後どうなるのかを芸能界の法律問題に詳しい河西邦剛弁護士の見解を交えてお伝えします。
◎河西邦剛:弁護士 エンターテインメント法務の第一人者 芸能界における法律問題に詳しい
1か月半後の反論は「妥当なタイミングと言える」
中居正広氏をめぐる一連の問題を受け、3月31日にフジテレビが設置した第三者委員会が調査報告書を公表しました。目的は中居氏と元女性アナウンサーの間のトラブルを解き明かすことではなく、フジテレビの関与や事後の対応、企業風土としての問題や類似事案の有無などを調べる目的でした。しかし、公表内容には中居氏に言及する部分もあり、そこに対する反論が出た、という状況です。
―――公表から1ヶ月半ほど経った反論についてどう見ていますか?
(河西弁護士)「妥当なタイミングだと言えるかと思います。今回、中居氏の代理人の弁護士が従前から変わっています。3月31日の報告書の発表から1~2週間程度かけて新しい弁護士を探したと思います。新しい弁護士と調整をして、どういった手法が中居さん側の名誉回復に最も適しているのか。各選択肢のメリット・デメリットを踏まえて、反論書面を作っていくのか考えていくと1か月半ぐらいの期間はかかるかなと思います」
中居氏側の反論、ポイントは3つです。
・「性暴力」の有無
・守秘義務解除
・報告書に中居氏の言い分は…
「性暴力」言葉の定義とイメージについて反論
まずは「性暴力」について。フジテレビの第三者委員会の報告書の中では、元女性アナウンサーが中居氏によって性暴力による被害を受けたと認定しています。
このとき「性暴力」は世界基準となっているWHOの
・強制力を用いたあらゆる性的な行為
・心理的な威圧や脅しが含まれ、程度は問題とならない とするWHOの定義をもとに判断したということです。
これに対して中居氏側は・・・
・中居氏に事情聴取し資料を精査した結果、「性暴力」という一般的に想起される暴力的・強制的な性的行為は確認されなかった
・中立性・公正性に欠け、名誉・社会的地位を著しく損なったと反論しています。
1月9日に発表した中居氏のコメントでは、トラブルは認めたうえで、「一部報道にあるような手を上げる等の暴力は一切ございません」と言及。第三者委が「性暴力」を認定したことに、中居氏側として受け入れがたい部分があったのかもしれません。
つまり、“性暴力”という言葉の取り扱いについての主張です。性暴力と聞いて、WHOの定義に基づくものと、日本でイメージされるもの(例えば性犯罪)で差がありますということです。
―――「性暴力」の判断基準は、裁判官によっても変わるほど難しい、というのが河西弁護士の見方です。
(河西弁護士)「第三者委員会はWHOの基準に乗っ取っていて、中居氏側は強制性・暴力性はないということを一貫して主張しています。どちらの主張を採用するかは実際の裁判になった場合には価値判断にもなってくるところがあります。暴力的な行為と想起する方もいるかもしれませんが、昨今は幅広く、限定的に捉えるべきではないかという考え方も広がってきています。どちらにするかは裁判官次第というところはあります。」