国内通信キャリア4社の決算会見が行われた。
NTTドコモとKDDIが料金プランを「値上げ」したことで、ソフトバンクと楽天モバイルの発言に注目が集まった。
【全画像をみる】ドコモとauが起こした料金プランの「値上げ旋風」。競合のソフトバンクと楽天が追随しづらい理由
この5年間、国内通信キャリアは2020年当時の菅義偉政権による「値下げ圧力」の呪縛に苦しめられていた。
菅義偉氏が官房長官だったときに「日本の通信料金は世界に比べて高すぎる。4割値下げできる余地がある」と発言。その後、首相になった時、NTTドコモからオンライン専用プラン「ahamo」が登場。他社も対抗せざるを得なくなり、結果として「携帯電話料金値下げ」を実現してしまった。
ただ、無理な値下げがたたり、大手3社の通信料収入はガタ落ち。第4のキャリアとして新規参入してきた楽天モバイルも低料金なプランを強いられ、巨額な赤字に苦しんでいる。
世間の風当たりを気にするドコモとKDDI
今回、NTTドコモとKDDIが値上げプランを投入するにあたり、世間の風当たりを相当気にしている様子がうかがえる。
「これまで値下げ競争をしていたにもかかわらず、一転して値上げとは何事だ」という炎上を恐れていた。料金プランを改定するにあたり、丁寧な説明で世間の理解を得ようと腐心していた。
スマホと衛星との直接通信サービスを組み込んだ料金プランを提供するKDDIの松田浩路社長は「経済の好循環が重要。他社の永続的な成長が必要だという意見は、業界全体として同意であると捉えている」と語る。
通信会社がサービスを提供する上で、全国に基地局といった通信設備が不可欠だ。すべて電気で動かしているため、昨今の電気代の高騰により、コストが上がっている。実際、数年前に比べて電気代が1割上がっており、それだけでコストも1割上昇している。
もうひとつ、通信会社が取り組まなくてならないのがパートナー会社への還元だ。街中にあるキャリアショップを運営する販売代理店、基地局を建てる建設会社の労務費高騰に対応しなくてはならない。
NTTドコモの前田義晃社長も「あらゆるコストが増えているのは事実。お客様に高いレベルの対価を払っていただけるサービスを提供していく方向になんとか持って行きたい。その意味で通信だけでなく、その上に乗ってくる価値をニーズとして持っているユーザーにどうアプローチしていくかが重要だ」という。
NTTドコモはデータ使い放題のプランに月額4200円のスポーツ配信サービス「DAZN」が見放題になるという「価値」を載せた「ドコモMAX」を6月より開始する。
NTTドコモとKDDIが値上げという英断を行った一方で、悩ましい立場となったのがソフトバンクだ。