4月27日に集英社オンラインでも取り上げた、いわゆる「カスハラ防止条例」の施行から1ヶ月以上が過ぎた。この条例では、カスタマーハラスメントに該当する行為や「就業者」の定義が示されているが、ガイドラインをよく読むと、一見「就業者」とは思えない立場の人々も対象に含まれている。いったい、こうした人々はどのような被害を想定して記載されたのか。担当部署を訪ねて話を聞くと、そこには予想外の回答があった。
社員や店員だけじゃない! PTA、自治会役員、議員もカスハラ対象に
今年4月から東京都・北海道・群馬県・三重県桑名市など、全国複数の自治体で施行開始された「カスハラ防止条例」。
制定がもっとも早かったのは東京都で、昨年10月4日に条例を制定し、12月25日には『カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)』も公開。
このガイドラインでは、カスハラに該当する行為の例や、顧客・就業者の定義などが紹介されている。なかでも注目すべきは、保護の対象となる「就業者」の範囲だ。
定義によると、「就業者」とは〈労働者だけでなく、有償・無償を問わず業務を行うすべての者〉を指すという。具体例として、企業の従業員や公的機関の職員のほか、PTA役員や自治会役員、議員、家族従事者などが挙げられている。
カスハラといえば、従業員と客とのトラブルというイメージが一般的だ。しかし、こうした多様な「就業者」が保護対象に含まれることからも、条例が想定する範囲の広さがうかがえる。
なかでも自治会やPTAといった組織は、「客」に相当する存在や、カスハラに該当する行為がイメージしづらいと感じる人も多いのではないだろうか。
そこで、「カスハラ防止条例」の担当部署である東京都産業労働局・雇用就業部労働環境課に、直接話を聞くことにした。まず話を聞いたのは、自治会役員に関するケースである。
自治会といえば、近年では加入拒否やゴミ捨て場の使用制限など、住民間のトラブルがたびたび話題になっている。2020年には、自治会への非加入を理由にゴミ捨て場の利用を禁止された夫婦が、損害賠償とゴミ捨て場利用権の確認を求めて自治会を訴え、審理は最高裁にまで発展。
ガイドラインでも〈自治会などの地域住民の有志で、防犯や清掃活動等に従事する人〉は「就業者」に含まれるとされているが、 ゴミ出しに関するトラブルについては、「就業者」に該当する人物が関与していないため、カスハラには分類されないそうだ。
「条例は〈就業者の安全および健康の確保〉などを目的としており 、ガイドラインでは『就業者』を『有償・無償を問わず業務を行うすべての者』を指すと しています。
この『業務』に該当するのは、事業者の事業に関連して行われる経済的な活動又は社会的な活動における行為を意味し、社会的な活動の例として『地域社会を支える活動』や『伝統芸能・工芸技術の伝承』、『生活の支援・子育て支援』などが 挙げられています。一方で、『家庭生活上の活動』は含まれません。
そのため、ご指摘のようなゴミ出しに関するやりとりは、業務ではなく家庭生活上の活動と考えられる ため、『就業者』には当たらないと私たちは整理しています」(東京都産業労働局雇用就業部労働環境課・担当者、以下同)