将棋の第83期名人戦七番勝負第4局が5月17・18の両日、大分県宇佐市の「宇佐神宮」で指され、藤井聡太名人(竜王、王位、王座、棋聖、棋王、王将、22)が永瀬拓矢九段(32)との千日手指し直し局に141手で敗れた。この結果、シリーズ成績は藤井名人の3勝1敗に。注目の第5局は5月29・30日に茨城県古河市の「ホテル山水」で指される。
藤井名人が逆転でシリーズ初黒星を喫した。宇佐神宮御鎮座1300年記念として開催された第4局は、後がない永瀬九段が入念な準備を重ねて千日手へと誘導。1日目の午後5時3分に千日手が成立した。藤井名人は「先手番だったので千日手は本意ではなかったが、やむを得ない形になってしまった」とコメントし、肩を落とす場面もあった。
仕切り直しで2日目に始まった指し直し局では、先後を入れ替え永瀬九段の先手番に。前日に多く残していた持ち時間とともに角換わりから相早繰り銀の戦いとなると、6筋に玉を寄る新手を披露。ここでも深い研究を藤井名人にぶつけることとなった。
しかし、藤井名人はこれまで“悪形”とされていた永瀬九段の新手を受けても、動じることなく穏やかに対応。永瀬九段は直線的な細い攻めで後手陣へと迫ることとなった。急所がわかりづらくじりじりとした戦いは、互角のまま終盤へ。両者ともに体力勝負ともなる夜戦に突入すると、藤井名人はギアを上げて攻め合いへと展開させていった。
藤井名人は角の利きを活かして盤上を掌握すると、緩急自在の指し回しでリードを拡大。しかし、最終盤で辛抱し続けた永瀬九段にチャンスが巡ることとなった。形勢不明の激しい叩き合いとなると、ぎりぎりの接戦の中で永瀬九段が渾身の猛追。永瀬九段が執念の粘りを実らせると、藤井名人は静かに投了を告げることとなった。
勝利した永瀬九段は、「途中で全然ダメにしてしまったと思っていた。(第4局は)後手番をメインで考えていたので、準備が薄い将棋を指してしまった。(玉を6筋に寄る作戦は)指してみたい将棋だったが、直前の詰めが甘かったと思う。指しているときは二転三転の意識はなかった。一瞬勝ちがあったような気がしたが、複雑でよくわからなかった」とコメント。
一方、敗れた藤井名人は「中盤戦に入ったあたりで苦しめにしてしまった。その前の段階の課題が残ったかなと思う。その後は楽しみな局面もあったと思うが、正確に指すことができなかったので、全体的に読みの精度が足りていなかったと思う。千日手局も含めて内容としても良くなかった。第5局では良い将棋が指せるように頑張りたい」と語り、疲労をにじませていた。
この結果、シリーズ成績は藤井名人の3勝1敗に。千日手指し直しの末、長い長い第4局にして初の黒星を喫することとなった。挑戦者の永瀬九段にとっては、4月の開幕局からついにつかんだ初白星。依然として後がない状況に変わりはないものの、次につなげることができるか、藤井名人が次こそ決着を付けるか。注目の第5局は5月29・30日に茨城県古河市の「ホテル山水」で指される。
(ABEMA/将棋チャンネルより)