公の仕事に就く者が、金品の受領に特に細心の注意を払うべきなのは言うまでもない。法律違反は論外である。常識に反する金品を受け取ることも厳に戒めるべきだ。
関西電力の高浜原発がある福井県高浜町の元助役から、県の現・元幹部が儀礼を超える金品を受け取っていた。関電役員らが金品を受け取っていたのと同じ人物からである。
県が設置した調査委員会は元助役への便宜供与は否定した。しかし同町では元助役が関係する会社への、疑わしい契約も指摘されている。法的な不正があるなら捜査当局の厳しい追及も必要だ。
そもそも県職員は公職である。電力会社の業務も公共性が高い。そこで不正の有無以前に非常識な金品の受け取りが続いていたことに、改めてあきれる。関電ともども恥じ入り出直すべきである。
同県では100人以上が金品を受け取っていた。調査委は、うち21人が儀礼の範囲を超えているとした。小判を受領していた者もいた。儀礼を超える金品の受け取りは、常識で拒否しなければならない。7人は返礼もしていない。
関電は平成30年までの約7年で役員らが3億円以上の金品を受領していた。50万円相当のスーツ仕立券も使用されていた。第三者委員会が詳細を調査している。
同県も関電も、返却しようとしても厳しく拒絶されたという。元助役が原発誘致の実力者として、県にも関電にも影響力を持っていた構図が浮かび上がりはする。だが一線を越えてはならないのは言わずもがなだ。
元助役は原発関連会社との関係も深かった。関電が工事を発注した地元建設会社が元助役に約3億円を提供し、関電に還流した疑いも持たれている。県幹部への金品にもこの構図が当てはまるなら、電気代が不当に使われていたことになる。もってのほかである。
問題なのは、関電と同じく同県も組織として機能していなかったことだ。調査委の報告書は、元助役は対応に気を使う必要がある人物と認識されていたが組織的な対応をしていなかった、とした。関電も個人に対応を任せていた。
組織としての危機管理意識のなさがずさんな事態を招いた。そのことを肝に銘じ、組織改革にも全力を挙げねばならない。関電も同様である。それなくして原子力行政への信頼回復は遠い。