嫌なことを言われてもイラッとしない人が意識的にやっている「当たり前の習慣」とは?


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● ほとんどの人が 基本の呼吸ができていない

 藤田康人氏(以下、藤田) 普段、無意識で行っている呼吸は、生きるために必要不可欠です。その方法に大きな差があるとは、なかなか想像できません。大貫さんはMLBアリゾナダイアモンドバックスのマイナーリーグアスレティックトレーナーとしてご活躍されていましたが、プロスポーツの世界では、すでに呼吸の重要性は認知されているのでしょうか?

 大貫崇氏(以下、大貫) 呼吸は、MLBでも体幹との関係性で重視されています。しかし呼吸を深く研究していくと、パフォーマンスの維持や怪我予防、スランプの抜け出しまで、幅広くカバーできることに気づきました。驚くことに、アスリートの実に9割の人々がうまく呼吸ができていないという調査結果もあります。それは呼吸の仕方はもちろん、呼吸に対する考え方も間違っているからなのです。

 藤田 ほとんどの人が、正しく呼吸ができていないということですね。身体と呼吸は、どのようにつながっているのでしょうか?

 大貫 呼吸は実のところ、“吐く”ことが最も重要なんですが、現代人は吸うことを重視しすぎるあまり、吸い込んだ空気が身体から抜けきっていません。例えて言うなら「満タンのペットボトル」。それが今の私たちの身体です。まさに水でパンパンのペットボトルのような状態なんです。そんなペットボトルを捻ろうとしても、難しいですよね?

 大貫 私たちの身体も同じで、パンパンに空気が詰まった状態だとうまく回らないのですが、空気の量が適正だと途端に動きやすくなります。さらに、空気が抜けることで、自律神経のうち副交感神経にスイッチが入って、全身がリラックスができるんです。

 藤田 なるほど。動きにくいのは、呼吸が関係しているのですね。呼吸の仕方によって、私たちの身体は自由を失っているともいえますね。

 大貫 そうです。空気が充満していると、関節の捻りが効かず、身体ごと回ってしまうんです。だから関節そのものにも負担がかかるし、当然、歪みも生じてきます。結果的に痛みや不快感を引き起こすことになるのです。

 藤田 呼吸というとしっかり吸うことが重要なように感じますが、そもそもその前提が間違っていたとは……。でも人類は、何万年もそうやって生きてきたのではないでしょうか?

 大貫 おっしゃる通り、空気がパンパンの状態、つまり交感神経を活性化して人類は危険を退け、進化してきたともいえます。しかし現在は平和すぎて、その必要がなくなっているのも事実。交感神経が役立つシーンは、戦いの時です。だから戦争中であったり、スポーツをしている時にはしっかり吸って、身体を空気で満たすのは問題ありません。交感神経は集中力を高めるので、ビジネスシーンでも大事な商談などの前に、身体は勝手に空気を満タンにしようとします。

 藤田 緊張している状態、というわけですね。

 大貫 でも問題は、この交感神経優位の状態はずっとは持続できないことなんです。自律神経は交感神経と副交感神経がオンとオフを繰り返すことでバランスをとっています。ずっと交感神経のアクセルを踏み続けることはできないようになっています。どこかで副交感神経に切り替える瞬間がなければ、身体が休むことができません。ところが現代人の多くが、交感神経が高まったままベッドに入ってしまっているんです。

 藤田 私もきっともそうなっていると思います。よく「深呼吸が大事」だと聞きますが、それは正しいのでしょうか?



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