農水相の大失言・辞任で瀬戸際の「減反政策護持」、玉砕覚悟のコメ行政が手を染める「農家も国民も犠牲にする愚策」とは


 5月21日、江藤拓農林水産大臣が辞任に追い込まれた。

【画像】「頭じゃなくて米価を下げろ」農水相謝罪に国民から猛ツッコミ!…それでも政府が「コメ高騰政策」を平然と続けるワケ

 「米の価格が高すぎる」という国民の訴えを解決するための陣頭指揮をとる立場であるにもかかわらず、身内の集会で「米は支援者からたくさんもらうので買ったことがない」「家の食品庫に売るほどある」などと発言して炎上したのだ。

 背景には、ちょっと前に国民の怒りが爆発したJAの「米は高くないキャンペーン」もある。発端は、JA全農山形県本部が4月27日、地元紙などに掲載した「それでも、お米は高いと感じますか?」という意見広告だ。この中でJAはこんなことを呼びかける。

 《ごはんお茶碗1杯の価格は約49円。菓子パン約231円、カップ麺約187円、ハンバーガーは約231円》
《それでもお米は高いと感じますか?どうか、知ってください》 
《未来につなげる持続可能な価格を、皆さんも一緒に考えてもらえませんか?》

 日本新聞協会によれば「意見広告」とは「世論形成ツール」だという。つまり、JA的には「5キロ5000円で大騒ぎをしているけれど、それでも激安」「コメを食べ続けたいのならワガママ言わずに今の価格を受け入れよう」という世論をつくりあげたいというワケだ。そんな「狙い」はJA全中の山野徹会長の発言からも透けて見える。5月13日の定例記者会見で現在のコメ価格は「決して高いとは思っていない」と言い放ったのだ。

 このようなコメ行政の迷走ぶりを見て、筆者が感じるのは「ああ、これはもういよいよ海外米の輸入拡大に踏み切るのも時間の問題だな」ということだ。

 多くの専門家が指摘しているように、海外の安価な米をたくさん国内に入れれば、それにともなって日本の米の価格も下がる可能性がある。一方で輸入品拡大は「日本の米農家をさらに衰退させる」という指摘もある。筆者もそう思う。

 しかし、これまでの農水省やJAの振る舞いを見ている限り、彼らの頭の中には「減反政策など既存のシステムを守る」ということしかない。そういうシステム至上主義に取り憑かれた組織というのは往々にして、本来守るべき人々を犠牲にするという「自滅的な政策」に流れがちなのだ。

 一体どういうことか、順を追って説明しよう。

 本連載でも述べたように、昨年の「令和の米騒動」や今にいたる米価格高騰は、国が50年以上も続けてきた「減反政策」のせいで、コメ農家の生産量と競争力が壊滅的に低下したことが大きい。この人口増加時代に立ち上げた生産調整システムが、人口が急速に減っている今でも見直すことなく、あいも変わらず信奉されている。それによって、「米不足」や安定供給体制への不安などさまざまなシステムエラーが起きて、価格が上がっているのだ。

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 これを改善するにはシステムを見直すことだというのは言うまでもない。減反政策の過ちを認めて、国をあげて米の生産拡大に乗り出し、輸出も増やしていくしかない。これまでのように減反を進めてサラリーマン化した兼業農家を補助金で「保護」するのではなく、日本米を世界市場に売っていくような大規模農業にこそ「支援」をする。



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