29年間で中3の正解率が2割も減った「数学者が異常を感じた設問」 背景にある教育の歪みの正体とは


【実際の回答を再現】厳しすぎ?意地悪?漢字テストで”不正解”になった「男」「加」「口」

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 筆者は専任教員として5つの大学、非常勤講師として5つの大学に勤務し、定年退職となった一昨年の3月末まで45年間に亘ってのべ1万5000人の学生に授業をしてきた(文系・理系ほぼ半々)。また90年代半ばから、小・中・高校合わせて1万5000人を対象として出前授業も行ってきた。

 その長い年月を振り返ると、指摘しなくてはならない大きな変化を感じることがある。それは「試行錯誤」の問題に取り組む学生の姿である。昔は、時間が余った授業中に誰でもチャレンジできる試行錯誤の問題を出すと、全員が楽しく取り組む姿をよく見たものである。

「この問題の“やり方”を教えてください」

 ある日、偶然にもそのような質問をしたことがある学生が訪ねてきて、授業ノートを示しながら「今日の授業で試験対策として暗記しておくべきことはどこですか」という質問をしてきた。不思議に思っていろいろ尋ねると、「数学の学びとはやり方の暗記」だけだと思っていたのだ。筆者は学生からの授業感想文は大学を離れても大切に保管してあり、「問題解法の暗記より定理や公式の証明を大切にして、いろいろ考えることを大切にした授業を受けたのは忘れられない」という内容のものが相当多くあることを踏まえると、筆者の驚きが分かってもらえると思う。

 同じ傾向は、数学の入学試験の監督をしてきたことからも感じた。昔は記述式試験が中心であったこともあるが、ほぼ全員が終了時間ギリギリまで真剣に答案に向かっていた姿が今も目に浮かぶ。それが近年は、大学入試センター試験のようなマークシート式試験が中心になった影響か、「やり方」を暗記した問題は直ぐに処理して、「やり方」を思い出せない問題は考えることなく飛ばしてしまう姿を多く見るようになった。そして、諦めの早い受験生は机の上で静かに寝てしまう。まるで暗記科目の試験監督をしているような思いをしたのである。



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