アップル社の公式サイトにも記載が
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、米アップル社が秋に発売を予定している新型「iPhone」は、現行モデルより値上がりするという。販売中のiPhone16は、12万4800円から。これより高くなるとあれば、「アップル帝国」の高笑いが聞こえてきそうだ。
その一方で電子立国ニッポンの意地を見たというべきか、逆に同社から毎年料金を“徴収”している会社がある。名古屋のインターホン・メーカー「アイホン」だ。
名前からして想像がつくかもしれないが、アイホン社が受け取っているのは商標の使用料だ。実際、5月8日に発表された同社の決算短信には〈受取ロイヤリティー〉として1億5000万円が計上されている。一方のアップル社の公式サイトにも最後に〈iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています〉と書かれている。どんな事情があったのだろう。
経済部のデスクが言う。
「アップル社が日本でiPhoneを初めて発売したのは2008年ですが、すでに似た名前のアイホン(英名はAIPHONE)が存在していました。両社が話し合った結果、日本名は『アイフォーン』とし、ロイヤリティーの支払いと、アップル社の日本サイトにだけ、断り書きを入れることになったといわれています」
「永遠に権利を主張できる」
確かに特許庁によれば、1955年にアイホン社から〈アイホン〉が、また、69年には〈AIPHONE〉が商標登録されている。商標権に詳しい弁理士の平野泰弘氏によると、
「商標権に触れるかどうかを判断する基準は、三つあります。まず商品の“外観”。次に“観念”。キングと王様は言葉が違っても意味は同じですよね。商標法では、同じ意味合いなら言葉が違ってもダメなのです。3番目が“称呼”。これは発音が同じか近接しているということ。iPhoneの場合は称呼がアイホンと似ていたということでしょう」
アップル社にしてみればどうってことのないロイヤリティー料かもしれないが、平野氏が続けるのだ。
「特許と違って商標権は保有している側が更新すれば、ほぼ永遠に権利を主張できます。ですから、アイホン社は大変なブランド名を持っていることになります」
アイホン社に聞くと、
「(受取ロイヤリティーの)具体的な内容は公表しておりません」(広報担当者)
アップル社の売り上げが約57兆円に対してアイホン社は約633億円。ちょっとオーバーかもしれないが、「小さな巨人」と呼ばせていただこう。
「週刊新潮」2025年5月22日号 掲載
新潮社