国民民主・玉木代表の場当たり的「皇室政策」 成城大教授・森暢平


 夏の参院選で国民民主党から立候補する元衆院議員山尾志桜里が、女系天皇についての議論を促す意見をX(旧ツイッター)に投稿した。これに対し、同党代表の玉木雄一郎は「発言、発信には注意してほしい」と山尾に伝えたという。しかし、同党の皇位継承問題に対する姿勢が玉木の一存によって決するという党の在り方に問題がある。(一部敬称略)

『読売新聞』が、女性宮家創設などを大々的に提言した5月15日。山尾はXに、「(記事の)説得力の厚みに敬服。女性皇族が結婚した場合の夫と子の地位についても「『妃』と同じ立場が自然」と論じています」と投稿し、さらに「そもそも夫と子を(不自然にも)民間人と決め打ちすることで、女系天皇の議論を避けつつ、女系天皇の選択肢を排除する進め方は間違っています」と続けた。

 山尾を擁立したのは玉木である。その玉木は2日後の5月17日、山尾への「注意」を記者団に明かした。5月18日にはXへの投稿で、「全体会議」で議論の取りまとめの段階にあり、静謐(せいひつ)な環境を整えるため、「今は個人の意見を対外的に発信することは控えて欲しい」と山尾に伝えたと書き込んだ。

 山尾は自身の立候補が決まった5月14日、YouTube上の「山尾しおりチャンネル」で以下を述べている。「議員としてのキャリアを通じては、皇位継承問題に取り組んできました。今まさに大事な局面を迎えていますよね。国民統合の象徴である天皇の地位は、市井の国民の自然な感覚に沿って安定的に引き継がれていくことが、とてもとても大切です。そのための議論に貢献していきたいとも思っています」

 山尾は、取りまとめ段階にある今こそ発信することが大事だと考えているのであって、静謐な環境が必要だから「個人の意見は控えよ」という玉木の考えはどうかと思う。山尾は過去、さまざまな機会に女性・女系天皇容認の発言を続けており、信念を変えるとは思えない。玉木がそれを知らないわけがなく、重要な政策について詰めないまま立候補を要請したのではないか。そうだとしたら、票ほしさの場当たり的要請と評価されても仕方がない。



Source link