若者のアルコール離れが叫ばれて久しい。コロナ禍を経て社会的な健康志向が高まったことが要因として挙げられているが、アサヒビールの勝木社長は別の理由を指摘する。なぜ、若者はアルコールを飲まなくなったのか。
酒を飲まない若者たち
かつては仕事帰りの一杯は働く大人たちの楽しみだった。アルコールは疲れを癒すだけでなく、同僚との絆を深める場でもあった。
しかし、最近では若者がアルコールを飲まなくなったという。この波は日本だけでなく、世界的に広がっている。なかでも、Z世代(1990年代半ばから2010年代初頭に生まれた若者層)のアルコール離れは深刻だ。
2023年に実施された米国での調査によると、35歳未満の成人で「飲酒をする」と答えた人の割合は、2001〜2003年には72%だったのに対し、2021〜2023年には62%にまで低下していることがわかったと米紙「USAトゥデイ」は報じている。アルコールの健康へのネガティブな影響を懸念して飲酒を控える若者が多いという。
また、米国の公衆衛生長官がアルコール飲料に対し、タバコと同様、過度な摂取がガンのリスクを高める可能性があるという警告ラベルを導入するべきだと呼びかけた。健康意識の高まりに加え、インフレによる消費意欲の低下によって飲酒人口が減少していると、米メディア「アクシオス」は報じている。
国税庁の発表によると、日本の成人一人あたりの年間飲酒量は、1995年に100リットルだったのに対し、2020年には75リットルに大きく減っている。新型コロナウイルスの流行の影響を受けたライフスタイルの変化が背景にあると、英放送局「BBC」は報じている。
飲酒離れが進む、本当の理由
アルコール離れの原因は健康意識の高まりだと言われてきたが、これに異議を唱えた人物がいる。ビール大手のアサヒグループHDの代表取締役社長兼CEOの勝木敦志だ。
Z世代が健康への影響を懸念して飲酒を控えるようになったことよりも、ゲームや動画配信、ソーシャルメディアといったデジタルエンターテインメントの台頭のほうが、アルコール消費に与えた影響ははるかに大きいと勝木は英「フィナンシャル・タイムズ」紙に語っている。
COURRiER Japon