「ブルーインパルスに万博の空を飛んでほしい」。そう大阪府の吉村洋文知事は要望してきた。だが、航空自衛隊練習機T4の墜落事故が起こったばかりだ。大阪・関西万博会期中の飛行は実現するのか。
【写真】大空を飛ぶブルーインパルス。96年以来、事故機と同型のT4を使っている
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■鳥取県の航空祭は中止
5月25日に予定されていた航空自衛隊美保基地(鳥取県)の航空祭は、同月14日に愛知県犬山市で起こったT4墜落事故などを理由に中止された。イベントでは、アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が飛行を行う予定だった。ブルーインパルスは1996年以来、墜落機と同型のT4を使用している。
SNSには参加を予定していた人らから、「事故直後だから、仕方がない」といった声があがった。
■吉村府知事「ぼくは飛んでほしい」
ブルーインパルスは、大阪・関西万博の開幕日の4月13日、会場の上空を飛ぶ予定だったが、悪天候のため中止された。
その3日後、大阪府の吉村洋文知事は、「万博の空を、ぼくはブルーインパルスに飛んでほしいという思いが強くある。そう思っている方が大勢いると思う」と記者会見で語り、中谷元・防衛相に再派遣を要望したことを明らかにしていた。
防衛省も万博の会期中にブルーインパルスを再派遣する方向で調整してきた。
■墜落事故を受け「見合わせ」
だが、5月14日に起こった墜落事故で、搭乗員2人が死亡。現在はこの事故を受け、ブルーインパルスの使用機を含めて保有する全てのT4約200機の飛行を見合わせている。
10月13日までの大阪・関西万博の会期中にブルーインパルスの飛行は実現するのだろうか。
元空自の1等空佐で、航空技術分野の危機管理に詳しい松家秀平・千葉科学大学教授はこう話す。
「今回の場合、『飛行停止』ではなく、一時的な『見合わせ』の措置です。総合的な判断で、T4の運用を再開する可能性を否定するものではない、という趣旨を内倉浩昭・航空幕僚長も述べています」(松家教授、以下同)
実際、自衛隊機に事故があった場合、その原因の公表を待たずに飛行を再開したケースもあるという。