米南部テキサス州で4日未明に発生した大規模な洪水は、これまでに少なくとも120人の死者を出し、160人以上が行方不明となっている。特に被害が集中したカー郡では90人以上が犠牲となり、発生から1週間が経過した11日時点でも、その生々しい爪痕が深く残されていた。災害の規模拡大には警報システムの不備が影響したとの指摘もあり、当局の対応に対し疑問の声が上がっている。
現地の状況
大雨によりグアダルペ川が氾濫した現場では、強い日差しが照りつける中、河川敷で大量の倒木を撤去するボランティアたちの姿があった。被災した住宅からは、住民らが慌ただしくがれきや家具を運び出していた。地域全体で復旧作業が急ピッチで進められているものの、被害の大きさを物語る光景があちこちで見られた。
テキサス洪水後の復旧作業で倒木を撤去するボランティアたち
被災者の証言
母親(75)の自宅が被災したというイベット・カントゥさん(57)は、川を見つめながら立ち尽くしていた。彼女は、「母は自宅が浸水してきて初めて何が起きているのかを知った。着の身着のままで逃げ出して何とか助かったが、あと数分遅ければ犠牲になっていたかもしれない」と、間一髪の状況を語った。また、近所の子供たちが複数亡くなったり、行方不明になったりしていることに言及し、「河川敷は遊歩道のようになっていて、子供たちがいつも遊んでいた。連邦政府や州は、なぜこんなことになったのかしっかりと検証すべきだ」と憤りを示した。
警報システムの問題点
米メディアは、今回の被害拡大の一因として警報システムの不備を指摘している。ニューヨーク・タイムズ紙は10日、カー郡が2024年に連邦緊急事態管理局(FEMA)に提出した報告書の中で、「1年以内に洪水が発生する可能性が高い」と警告し、警報システムの導入が解決策になると説明していたと報じた。しかし、郡は2017年から2024年の間に少なくとも3回、システム導入のための資金調達を試みたものの、いずれも州に却下されていたという事実が明らかになっている。
トランプ大統領の視察
トランプ大統領は11日、カー郡カービルの被災現場を視察した。遺族と面会し、救命救急士らとの会合に出席した大統領は、「この惨状は信じがたい。こんな光景は見たことがない。米国民の心は打ちひしがれている」と述べ、被害の甚大さに言及した。しかし、記者から警報不備に関する質問が出ると、当局の対応を「全員が素晴らしい仕事をした」と擁護。さらに、「そんな質問をするのは悪人だけだ。非常に悪意がある」などと主張し、いらだちをあらわにする場面も見られた。
まとめ
テキサス州を襲った大規模な洪水は、多数の死者・行方不明者を出し、地域社会に甚大な被害をもたらした。発生から一週間経っても復旧作業は続くが、被災者からは警報システムの不備に対する強い批判が上がっている。過去の警告や資金調達の試みが州に却下されていたという報道は、今後の検証において重要な論点となるだろう。トランプ大統領の視察と発言は、当局の対応への評価を巡る議論にさらなる波紋を広げている。