[戦後80年 昭和百年]地方<下>
日本は戦後、政府の強力な権限で国全体を牽引し飛躍的な成長を遂げた。経済発展が一段落すると地方分権が進み、自治体の権限が強化されたが、今度は人口減少や住民意識の変化といった荒波が足元を揺らす。生活の基盤となる地域社会の戦後80年をみつめる。
人口減や価値観の変化で地域コミュニティーの中心であった町内会も変革を迫られている。
タワーマンションが立ち並ぶ川崎市・武蔵小杉駅近くの「小杉町3丁目町会」は3月末、役員の高齢化などを理由に解散した。会長を務めた五十嵐俊男さん(82)は「自分たちが元気なうちに整理しよう」と決めたという。
周辺はかつて工場や個人が営む商店が集まり、40~50年前は町会に850世帯ほどが加入していた。祭りや餅つきを企画し、野球部の活動などを通じて住民が親睦を深めた。
バブル経済の崩壊後、工場が移転した跡地に超高層マンションの建設が相次いだ。一帯の再開発で住民の多くは転出するかマンションへ入居し、町会は加入世帯が半減、コロナ禍以降は地域の清掃や防犯パトロールをやめた。
五十嵐さんは「いざという時のため、今後さらに近所付き合いが大事になる。マンションの人たちも含め、地域全体で関われるような防災組織でもできるといいが」と話す。
町内会の解散は各地で相次ぐ。北海道帯広市では2018年度以降、21の町内会が解散した。それに伴い、町内会が維持管理する防犯灯計146基も取り外された。
このため、市は26年度から、約1万6000基の防犯灯を市で管理することを決めた。庁内では「町内会の意義が薄れ、加入率低下を助長するとの懸念もあった」という。
町内会は広報紙の配布やごみステーションの維持管理なども担ってきたが、市は依頼業務の見直しなど負担軽減策を検討中だ。
デジタル化
総務省によると、町内会や自治会などは23年4月時点で全国に約29万5000ある。同省の調査では、600市区町村の20年度の加入率は71・7%と、10年度に比べて6ポイント余り低下していた。東京都内では40%を切る区もある。