加齢とともに進行する脳の老化を抑えるためにも、良い食習慣を取り入れることが不可欠だ。100歳を超える長寿者の食事傾向には、意外な共通点があるのだという。健康寿命が延ばすために何をどのように食べたら良いのか、脳科学者が解説する。※本稿は、西 剛志『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
● やる気が出て認知症も防げる! 日常生活の中で大事なことは?
「食べるときは、30回は噛んでから飲み込むように!」
よく言われていることですが、実践するのがなかなか難しいことのひとつかもしれません。
でも、よく噛むことにはさまざまなメリットがあります。「噛むだけ」でこんなに得をするなら、やらないと損ですね。そのくらい「よく噛む」ことには効果があります。
よく噛むことの効果
〇運動機能や健康機能が向上
〇やる気が出る
〇記憶力が高まる
〇認知症を防げる
〇免疫力を高める
これを見てもわかるように、やる気脳、記憶脳、客観・抑制脳などさまざまなタイプの脳の老化を防いでくれます。
この中で特に注目したいのが「やる気が出る」というところです。
咀嚼はドーパミン神経を活性化するうえで、とても重要な役割を担っています。ドーパミンは脳の中の「線条体」という場所から出るのですが、咀嚼をすると、線条体が活性化し、ドーパミンがよく出るようになるのです。
ドーパミンは、やる気を高める作用があるので、よく噛む人ほどやる気が出るわけです。
最近やる気が落ちているという人は、食事を「よく噛むメニュー」にするといいと思います。
〇パンよりごはん
〇脂の多い軟らかい肉より歯ごたえのある赤身肉
〇イカやタコなど、噛みごたえのある食材
食事をつくるのがラクだからという理由で、朝食をパンにしている人も多いと思いますが、やる気を高めるという点で見ると、パンよりもごはん。もしパンにするなら軟らかいパンではなく、噛みごたえのあるパンのほうがおすすめです。
ただ、高齢になると歯が悪くなる人も多いですよね。そうなると、どうしても噛みごたえのあるものは食べにくくなります。ただ、軟らかいものをよく噛まずに食べていると脳の老化が進みます。
● 噛む回数は決めず 長く噛む工夫をしてみる
また、歯の影響で噛むことが苦痛になってくると、食事そのものが楽しくなくなってしまうこともあります。噛むのが痛い、噛むのがつらい、そんな状態にさらに加齢により胃腸の状態まで悪化してしまうと、食事はもう苦痛タイムになってしまいます。
脳は苦痛を回避する特性があるので、そうなると食事をできるだけ避ける方向に脳が働きます。
脳がそうならないためにも、工夫が必要です。
なにも硬いものを食べないといけないわけではなく、噛む回数を増やすような食べ方をすればいいのです。
たとえば、軟らかい食べ物でもできるだけすぐに飲み込まず、よく噛むようにする。あとはグミやガムを日常的に利用するという手もあります。また、食べることを苦痛にしないために、食事にいつもよりちょっと贅沢なものや大好きなお店のメニューを一品だけ取り入れてみる。ちょっとだけ食卓に贅沢を取り入れると、脳はその快感で思ったより食べられるようになるからです。
最後にプチ情報をお伝えします。
「よく噛むことは、よいことだ」という認識は広まりつつありますが、一般的に「30回噛みましょう」などと推奨されることがあります。そのような方法は、脳科学的にはおすすめしません。