トランプ政権下では大学への締め付けが強まっているが、中国共産党との繋がりの懸念などから、中国人留学生が名指しで非難の対象となった
ドナルド・トランプ米大統領は大統領就任以来、アイビーリーグ(アメリカの名門大学の総称)に対する締め付けを強化している。その中で複数の外国人留学生ビザを取り消そうとしてきた。
【動画】トランプ大統領、ハーバード大学の留学生の「名前と国名」を要求
そして5月28日、トランプの腰巾着であるマルコ・ルビオ米国務長官が、「積極的に」中国人留学生に発給されたビザを取り消すといった新たな方針を発表した。
ルビオはX(旧ツイッター)への投稿で、「アメリカは、中国共産党に関係する者や重要分野を専攻する者を含め、中国人留学生のビザ取り消しを開始する」と述べた。
さらに、ルビオは5月28日の発表の中で、中国人留学生のビザ取り消しについて、国務省が国土安全保障省と連携して取り組むとしたうえで、「中国および香港からの今後のビザ申請に対する審査を強化するため、ビザの審査基準も見直す」とも述べている。
この発表は、ルビオが同日にアメリカ人を検閲する外国政府関係者のビザを阻止すると警告した後になされたものである。
「言論の自由は、我々アメリカ人にとって最も大切にしている権利の一つである。この権利は我々の憲法に明文化されており、世界における自由の象徴としてアメリカを際立たせている」ともルビオは述べている。
「われわれがアメリカ国内での検閲に対抗する措置を講じる中で、外国政府やその関係者がその隙間を縫うような、憂慮すべき事例が見られる」
ルビオおよび国務省は、この措置の具体的な実施方法や、アメリカ人の言論の自由が脅かされた具体的な例についての詳細は明かさなかった。
ルビオのこの方針発表に対し、テキサス州選出のキース・セルフ下院議員(共和党)は同日、Xに「アメリカの地を踏むのは外国人にとって権利ではなく”特権”である。ルビオはアメリカの利益を最優先にし続けている!」 と投稿、賛意を示してルビオを称賛した。
本誌は国務省に対し、コメントを求めている。
留学生ビザの面接も一時停止。SNS投稿の審査も導入?
トランプ政権は大学を目の敵にしており、締め付けを強化している。
例えば、ハーバード大学やコロンビア大学が、ガザ地区におけるイスラエルのハマスとの戦争に対する学生の抗議行動の中で、キャンパス内の反ユダヤ主義に対処する姿勢が不十分だと非難している。
また、ハーバード大学が外国人学生を受け入れるのに必要な「学生・交流訪問者プログラム(SEVP)」の認可を取り消そうともした(後に裁判官により差し止められた)。
トランプは5月25日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「なぜハーバードは、学生の約31%が外国からの留学生であると公表しないのか? しかも中にはアメリカに対して友好的ではない上、学生の教育費を一切支払っておらず、今後支払うつもりはない者もいる」と投稿した。
「我々はその外国人学生が誰なのか知りたい。ハーバード大学には何十億ドルも出しているのだから当然の要求だ。だが、ハーバード大学はなかなか情報を出そうとしない。我々は外国人学生の名前と出身国を求めている。ハーバード大学には5200万ドルあるのだから、大学運営にはそれを使え。連邦政府に金をたかるのはもうやめろ!」
加えて、トランプ政権は、世界各国に所在するアメリカ大使館、領事館は、新規留学生および交流訪問者ビザ面接を一時停止した。この停止期間を利用して、外国人学生ビザ申請者に対し、SNSの投稿内容の審査を義務づける新たな方針の導入を検討しているようだ。
中国人留学生のビザ取り消しに関するこの方針は、詳細が明らかになっていない。具体的にどのように実施されるのか、卒業を控えた学生が引き続き学位や単位を取得できるのかなどについても、現時点で明らかになっていない。
ただ、トランプ政権の「反知性主義」的な動きが今後も続くことは明らかなようだ。
アンナ・コマンダー