モンゴルで首相の退陣を求めるデモが続いている。発端は、ヘリコプターで交際相手にプロポーズをするなどの、首相の息子の豪勢な暮らしぶりだ。
■首相の息子が豪遊で連立崩壊か
まずは、モンゴルで何が起きているのか見ていく。
首都ウランバートルでは、14日から連日抗議デモが行われている。デモの参加者が求めているのは、オヨーンエルデネ首相(44)の退陣だ。
オヨーンエルデネ氏は現在44歳で、議会の第1党、人民党の党首。アメリカのハーバード大学の大学院で学び、夫人との間に3人の子供がいる。
退陣要求のデモに発展するきっかけとなったのが、20代の息子とその婚約者のぜいたくな暮らしぶりだ。
現地メディアが伝えたところによると、婚約者が自身のSNSで、写真とともにッグや高級外車を贈られたこと、さらにヘリコプターでプロポーズされたことなどを伝えたところ、これが国民の怒りに火をつけた。
このデモの影響で政局も混乱している。
オヨーンエルデネ首相率いる人民党は、第1党とはいえ68議席で、議会の定数126の過半数をわずかに上回る程度。そのため、42議席を持つ民主党、8議席のフン党と連立政権を組んでいる。
しかし、現地メディアによると、今回のデモを受け、民主党の一部議員が連立政権からの離脱を口にし、これに対し人民党も民主党との連立解消を決定したという。このことから連立政権が崩壊するとの見方が浮上している。
そして、ここまで大規模なデモに発展したのは、首相にクリーンなイメージがあったことが背景にあるという。
そもそもモンゴル(国名:モンゴル国)は、国土面積が日本のおよそ4倍で、人口は静岡県とほぼ同じ350万人ほど。牧畜産品、石炭、銅が主要な産業となっている。
貿易では中国への輸出が全体の8割以上を占め、輸出品の6割が石炭。そのため、モンゴルの経済成長は中国が牽引(けんいん)してきたといえる。
しかし、そうしたなか、2022年に“石炭泥棒”事件と呼ばれる汚職が発覚した。
事件を明るみにしたのが、2021年に誕生したオヨーンエルデネ政権。当時“反腐敗”を掲げていた。
そして、問題を追及するなかで「炭鉱を管理する国営企業が、開発を手掛ける中国企業に石炭の販売収入を環流していた」「関税をかけることなく石炭を中国に横流ししていた」ということが明らかになった。
これにより大規模な反政府デモへと発展した。このように“反腐敗”のイメージが強かった首相だからこそ、今回の息子の件で失望感を抱いた国民が多かったとみられる。