ロシアの侵略を受けるウクライナの情報機関、ウクライナ保安局(SBU)は1日、複数の露空軍基地をドローン(無人機)で一斉攻撃する特殊作戦「パウチーナ(クモの巣)」を同日実施し、露軍が保有する戦略航空機の34%に損害を与えたと発表した。ロシアの損失額は70億ドル(約1兆円)に上ったとした。ロシアも同日、国内5州の空軍基地がドローン攻撃を受けたと発表した。
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■核兵器の運用態勢に影響も
ウクライナのゼレンスキー大統領は同日のビデオ声明で「作戦は1年半以上準備されてきた」と指摘。作戦には117機のドローンと同数の操縦士が参加したとした。
ウクライナメディアがSBU筋の話として伝えたところによると、今回の攻撃で、早期警戒管制機「A50」や戦略爆撃機「TU95」、超音速戦略爆撃機「TU22M3」などを含む40機以上の露軍機を損傷させたとした。
事実であれば、露軍の爆撃能力が大幅に低下する上、核兵器の運用態勢にも影響が出ることが予想される。ウクライナは2日にトルコで予定される対露和平交渉でロシアの発言力を弱めるため、このタイミングで攻撃を決行した可能性がある。
■露基地付近トラックからドローン発射
報道によると、SBUは、露防空システムによる撃墜を避けるため、各空軍基地近くまで移動させたトラックからドローンを発射した。露当局に拘束されたトラック運転手が「積み荷が何か知らなかった」と話したとの情報もある。ゼレンスキー氏は、作戦を準備するため露国内に潜入していた要員が作戦開始前にロシアを脱出し、安全な場所にいると述べた。
一方、露国防省は1日、露中部リャザン▽北部ムルマンスク▽東シベリア・イルクーツク▽極東アムール▽西部イワノボ-の計5州の空軍基地がウクライナのドローン攻撃を受けたと発表。一部で航空機が炎上したとしたが、詳細な被害には言及しなかった。また、攻撃に関与した数人を拘束したとも主張した。