本を読むのはタイパが悪い? 講義の課題図書を敬遠する大学生たち 「効率重視」の考えに「がっかりした」「教え方を見直す」


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 昨年10月、都内にある私立大で日本文学史を教えている男性教授に講義後、男子学生が声をかけてきた。

「先生、推薦図書を買わなきゃ、レポートを書けないですか」

 教授は講義のなかで、課題のレポートの参考にしてもらうために4~5冊の推薦図書を紹介していた。

「そんなことはないけど、買うか、図書館で借りるなどして読んでみたほうが、レポートは書きやすくなるんじゃないかな」

 教授がそう返すと、学生は言った。

「では、要約を見ます。ありがとうございます」
 

 この学生は、講義後に書かせているリアクションペーパーにも、「推薦図書を買う必要ありますか」と書いていた。そしてほかの学生からも、課題図書を読む必要性についての質問があったという。

 教授は自身が担当するゼミで、「大学の講義のために書籍を読むことに、タイパが悪いと感じるのか」と学生たちに聞いてみた。すると、ほとんどの学生が、本を読み込んでレポートを書くことに「タイパが悪い」と答えたという。

 教授が振り返る。

「おお…これが若者の意見なのか…と、若干ひきましたね」
 

■学生たちは読書よりもAI要約?

 学生側はどう思っているのか。

「意味のない作業が多すぎる」

 そう話すのは、都内の私大に通う4年生の女子学生(22)だ。講義のなかで、当たり前のように出てくる推薦図書に、違和感を持ち続けてきたという。

「それを探して、手元に届くまで待って、到着してからも全部読むまでは時間もかかる。一つの課題にそこまで時間をかけるのって、とても効率が悪いように感じました」

 もともとは勉強好きで、講義にも意欲的に臨んでいた。しかし、必要な情報にたどり着くまでにかかる時間とお金にモヤモヤは募り、本を読むことに対して億劫になっていったという。

 本を読む「効率」を意識し始めた彼女は、書籍を読み上げるサービスを利用し始め、手に入りにくい講義の課題図書についてはAIに要約させるようになった。

「わざわざ本を探しに行き、買わなくてもいい。教授たちにバレているのかはわかりませんが、AIに要約させるようになってから、課題の作業効率はとても上がったと思います」

 そして、そもそも課題図書を読まなければ単位が取れない講義を避けるようになったという。

「本を読むことで吸収することもあるとは思いますが、時間をかけてよいものを作ろうという気持ちにはなれないです」
 

■生講義が「ゆっくりすぎる」

 学生が「タイパ」を求めるのは、大学のレポートだけではないようだ。

 関東北部の国立大学に通う男子学生(22)が入学したのは、コロナ禍が収束してまもないころ。リモートでの講義も一般的だった。講義の録画を通常の2倍速で視聴したあと、実際に対面で受けてみると、教授たちの話が「ゆっくりすぎてイライラした」。
 



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