コメ作りに大きな被害をもたらす害虫「イネカメムシ」が急増している。埼玉県では2025年に確認された越冬個体数が前年に比べて43倍になった。コメ不足が続くなかで、食害の拡大が25年産米の収穫減につながれば、混乱を増幅させかねない。
イネカメムシは体長12~13ミリの茶褐色のカメムシで、稲を非常に好む。汁を吸われると稲穂が実らなかったり、米粒の胚珠付近に黒い斑点が生じたりして出荷できなくなる。
埼玉県病害虫防除所が2024年11月から25年3月、イネカメムシの生息調査を行い、県内172地点の58.1%に当たる100地点で越冬する個体を確認した。1平方メートルあたりの個体密度は17.1匹で、前年調査の0.4匹に比べて43倍となった。同所の担当者は「調査時の体感としても増えている」と話す。
農林水産省が各都道府県に聞き取りしたところ、24年にイネカメムシを確認したのは37都府県に上り、未確認だったのは北海道、青森、岩手など北日本を中心とした10道県だった。
農水省によると、戦後直後に「稲の3大害虫」の1つとされていたイネカメムシは、1960年代以降は有効な農薬の登場やコメの栽培時期が早まったことなどから激減。一時は「死滅したのではないか」とみられていた。温暖化に加え、作期の異なるコメ品種が栽培されるようになったことなどから、近年になって発生が増加していると考えられている。