「自宅での看取りなんて、お金がないと無理」「家族への負担が大きい」というのが、日本で在宅看取りが増えない理由となっていますが、本当にそうでしょうか?
「お金がなくても、独居でも、心から満足できる最期を自宅で迎えられる!」と著者は主張します。山中光茂氏の著書『「家で幸せに看取られる」ための55のヒント』より一部抜粋、編集してお届けします。
■介護と「家族の負担」
どの調査をみても、半数以上の方は自宅でのお看取りを望まれています。
それにもかかわらず、日本の在宅看取り率は15%にすぎません。その大きな理由の1つは、日本人らしい家族への思いやりからくるものだと感じています。
本音を言えば「ずっと家にいたい」。でも、それを言うだけでご家族にプレッシャーをかけてしまう。ご家族に介護負担をかけるぐらいなら、自らの意思で施設や緩和ケア病棟を選ぶ、という心の動きがあるのではないでしょうか。
もちろん、家族側としても、自分たちが最期まで介護をする覚悟が持てないという人は多いでしょう。
実際に在宅診療を希望されたがん終末期の患者さんやそのご家族ですら、「自宅ではない最期」を望まれることは少なくありません。そこでいつも私がいうのが、「絶対にご家族に負担をかけることはありません」という言葉です。
もちろん、医療の世界だけでなく、この世界に「絶対」はないのかもしれません。それでも、私たちは「絶対にご家族に介護負担をかけない」という「覚悟」で在宅診療に臨んでいます。
患者さんのご家族が「負担」に感じるのは、「介護そのもの」だけではありません。
「苦しい」「痛い」など、患者さんが発する言葉で、本当に自宅でみていていいのだろうかという不安感が出てきます。昼は自宅で穏やかに過ごしてもらい、夜は苦しまずにしっかりと寝てもらう。そのような環境が保てるような医療技術の提供こそが、在宅診療医としての絶対的な仕事です。
私たちは、多くのがん末期の方々や難病の進行期の方々とのご縁をいただいていますが、持続的な苦痛や痛みを患者さんやそのご家族に負わせ続けたことはないと断言できます。






