◇社会学的皇室ウォッチング!/155 これでいいのか「旧宮家養子案」―第52弾―
皇位継承問題でジャーナリズムが盛り上がっている。5月15日の『読売新聞』提言に続き、『朝日新聞』も長文の社説で、女系天皇の道を閉ざすなと主張するなど各紙が持論を展開している。静謐(せいひつ)な環境などと議論に蓋(ふた)がされてきた状況に変化があるのは大変喜ばしい。(一部敬称略)
いまや議論のマイルストーン的な存在となった『読売』提言。女性皇族が婚姻後も皇室に残る案について、「皇統の存続を最優先に考えれば、女性皇族が当主となる『女性宮家』の創設を可能にし、夫や子にも皇族の身分を付与することで、皇族数の安定を図ることが妥当」と言い切った。中面の特集では、4月22日に行われた園遊会で、皇族が歩く道筋が三つに分けられ、未婚女性(愛子さま、佳子さまほか)だけで接遇する場が設けられたことに触れ、「これらの方々は、皇統の安定化に資する女性宮家の当主となりうる立場」だと評価した。さらに、元宮内庁幹部が「上皇ご夫妻の長女紀宮(のりのみや)さま(黒田清子さん)が結婚後も皇室にとどまり、ご両親を支えてほしいと願い準備したが、かなわなかった」というコメントを紹介する。
紀宮の婚約が明らかになったのは2004年11月。この直前、宮内庁と内閣官房、内閣法制局の幹部でつくる「懇親会」と呼ばれる組織が、「皇位継承制度のこれからのあり方について」と題する秘密文書をまとめ、小泉純一郎首相らに提出した(04年5月)。これが小泉政権による女性・女系天皇に向けた動きにつながる。元宮内庁幹部のコメントは、こうした動きは、紀宮の皇室残留、および、婚姻相手となった黒田慶樹の皇室入りを見込んだものであったことを明らかにした。
また、皇族の夫が民間人のままであっては、「夫の経済活動が特定の利害や政治に巻き込まれ、皇室の公平性、中立性が疑われるような事態」が出現する危険性にも触れた。そうした状況は、本連載が以前触れたようにスペインやノルウェーで実際に起きている。男性皇族が結婚すると妻は皇族となるのに、女性皇族の場合は夫が民間人のままというあり方は、そもそも不整合である。『読売』はその点、「夫婦一体で円満な家庭を築き、活動」することが大事であるとする。