小泉進次郎農林水産大臣の主導により、5キログラムあたり2000円台での備蓄米の店頭販売が始まった。転売ヤーによる買い占めを危惧する声も多く、大手フリマアプリでは備蓄米を転売禁止にする動きが出ているが、効果はあるのか――。(フリー編集・ライター 山野祐介)
● 「5キログラム2000円」の備蓄米で コメの価格は下がるのか
政府が備蓄米30万トンを随意契約で売り渡す方針を示したことを受け、産経新聞は『備蓄米、随意契約で放出も値下げ効果は不透明 最悪のシナリオは転売ヤーに狙われ高値継続』というタイトルの記事を配信した。
記事の内容は小泉進次郎農水相がプッシュする「5キログラム2000円」という備蓄米の価格設定が、あくまで備蓄米のみが商品化された際の想定価格であり、実際の販売方法は小売業者に一任されていることから、コメの高値が継続することを懸念する内容である。
そして、もう一つの高値継続要素として挙げられているのが「転売ヤー」の存在だ。
同記事は「最悪のシナリオは残った備蓄米が転売ヤーに買い占められ、一般のコメ価格の値下がりにつながらない事態が起きること」としている。
● 「転売ヤー」を コメ高騰の要因にするのは間違い
同記事では横浜市の輸入食品店で「備蓄米がブレンドされているとみられる5キロ入りのコメが十数袋積み上げられていた」ことを、コメを大量購入した転売ヤーの例として挙げ、楽天グループのフリマアプリ「ラクマ」をはじめとする大手のフリマアプリでは「備蓄米が含まれるとみられるコメが多数出品されている」とし、「小売事業者に対策を任せている今回の随意契約の方式では、転売を防ぎきるのは難しい。消費者が求める値下げ効果が実現するか、先行きは見えない」と締めている。
この記事だけを読むと、転売ヤーに買い占められてコメの価格が高止まりすることが、消費者にとって最大のリスクのように思える。Yahoo!ニュースでも配信されたこの記事には「確かに転売はさらに横行しそう」「転売ヤーに大損をさせることが必要ですね」とのコメントもついている。
だが、果たして本当に「転売ヤーに狙われるとコメの高値が継続する」のだろうか?
私はそうは思わない。産経新聞の記事は根拠に乏しく、「転売ヤー」を高騰の要因とすること自体が間違っており、アクセス数を稼ぐために無理やり転売ヤーを悪者にした記事であると考えている。
まず第一に、ボリュームの検証がない。