「ミスタープロ野球」長嶋茂雄さん(享年89)の逝去に、日本中が悲しみに包まれている。熱烈な巨人ファンとして知られるテレビプロデューサーのテリー伊藤さん(75)もその一人だ。プライベートでも長嶋さんと親交があったというテリーさんに知られざる秘話を聞いた。
【写真】監督として対決した“ON”コンビなど「ミスタープロ野球」の名シーンはこちら
* * *
──6月3日、午前6時39分に長嶋さんが肺炎で亡くなったという訃報がニュースで流れました。
今日は人生で一番、悲しくて寂しい日ですね。ミスター(長嶋さん)には本当にお世話になって、いろいろな思い出があります。
──どんなことを真っ先に思い出しますか。
大学1年のとき、学生運動で左目が見えなくなって、入院していたんです。人生にやる気をなくし、打ちひしがれていたんですけど、ちょうどその1968年の9月、阪神・巨人戦が甲子園でやっていた。その試合は荒れていて、王貞治さんが頭にデッドボールを受けて、そのまま病院送りになりました。阪神ファンと巨人ファンが大乱闘するような状況で、四番の長嶋さんはずっとそれを見ていたんです。その時、「ここで長嶋さんが打ってくれたら、僕も、もう一回人生を頑張れるな」と思ったんですね。そうしたら、ミスターは本当にホームランを打った。そのホームランが僕の人生の大きな転機になっています。人生の恩人なんです。
──長嶋さんのホームランが人生を立て直すきっかけになったんですね。
まだあります。社会人になって、いい仕事ができなくて、腐っている期間があったんですけど、ちょうどその時、長嶋さんも第一期の巨人軍の監督を解任された時期でした。僕も大変だけど、ミスターの方がもっと苦しい思いをしているなと思って、頑張った思い出があります。
──長嶋さんはいろいろな名言を残しました。
僕が衝撃を受けたのは、ミスターが「バッターボックスに立ったとき、ピッチャーの投げてきたボールの真ん中を打つ」と言っていたことです。それを聞いて僕は「世の中をナナメに見てはいけないんだな」ということを教わりました。