立憲民主党が内閣不信任案を出した場合、石破茂総理(68)は採決を待たずに、衆院解散に踏み切る方針だと朝日新聞が報じた。無論、野党に対するけん制だろうが、政権の支持率が長らく低迷する中で、なぜ“強気すぎる方針”が浮上したのか。そこには、万が一衆院選になったとしても「今なら勝てる」という石破総理の〝自信過剰〟もにじんでいる――。
岸田前総理は石破政権の問題点を指摘
「こういった少数与党時代、野党と調整をして、一つ一つ結論を出していくということだと、やはり、日本の国が大きな決断をしていくということができない政治になってしまっているなということを感じています」
5月28日に都内ホテルで、こう語ったのは岸田文雄前総理(67)。政治解説者の篠原文也氏が主催する「直撃! ニッポン塾」で、約1時間にわたり講演をした。
総裁選で石破総理誕生に貢献した岸田氏は、今なお党内で影響力を持つ実力者の一人。そんな岸田氏は、自らの政権で取り組んだ「防衛力の抜本的強化」や「エネルギー政策の大転換」について熱弁した後、現在の石破政権の問題点を指摘した。
「日本は、そして世界は引き続き歴史的な転換点にあるわけです。大きな決断をしなければならない場面は続くのではないか。大きな決断ができる政治を日本に取り戻していくことが大事なのではないか」
岸田氏が憂慮するように、少数与党の石破政権は、野党の協力なしには政権運営することができず、綱渡りの政権運営を続けてきた。
予算成立を巡っては、国民民主党と日本維新の会と「年収の壁」や、「高校無償化」を巡る問題で譲歩を重ねた。江藤拓前農水相の辞任劇でも、野党5党から「農水相不信任案」をチラつかされたあげく、江藤氏の事実上の更迭に追い込まれた。
野党への配慮を重ねるばかりで、総理自身が主体的に取り組んだ実績には乏しい。「石破カラー」は、なおざりになったままと言われている。
「どの政党と連立するかということになると色んな騒動になる」
仮に運良く、参院選で自・公で過半数を維持できたとしても、衆院が少数与党のままでは、現在のような難しい舵取りが続くことに変わりはない。
こうした苦境を乗り越える手段の一つが、参院選後に、連立を組み直し、少数与党から脱却すること。しかし、その道のりは容易ではない。国民民主党や日本維新の会との連立拡大、立憲民主党との「大連立」なども囁かれるが、前述の講演会で岸田氏はその難しさを語っていた。
「立民みたいに、右と左の幅が広い政党ですと、連立まで行くと、かなり党内でガタガタする。(他の選択肢にしても)自民党の中も結構幅が広いですから、どの政党と連立するかということになると、それは色んな騒動になると思います」
参院選後の連立の組み直しにも様々な障壁が存在する。となると、石破総理の脳裏に、少数与党脱却に向けた、もう一つの選択肢が浮かぶ。それは、どこかのタイミングで、衆院選に勝ち、自・公で過半数の議席を回復することだ。成功すれば、党内の求心力は高まり、長期政権への展望も見えてくるからだ。