兵庫県知事 情報漏洩問題:第三者委員会が「知事らの指示の可能性高い」と認定、混迷深まる事態

全国的に大きな注目を集めることは減ったものの、兵庫県では斎藤元彦知事を巡る情報漏洩問題を始めとした混乱が続いており、収束の気配は見えません。特に最近、この問題に新たな展開がありました。県の第三者委員会が、元県民局長の私的情報の漏洩について調査結果を発表し、元総務部長による県議会議員への漏洩を認定した上で、その漏洩が斎藤知事らの指示によって行われた可能性が高いと指摘したのです。これを受け、県は元総務部長を停職3ヵ月の懲戒処分としました。

一方、斎藤知事は、第三者委員会の指摘に対し「私からは、漏洩に関するような指示は一切していないという認識です」と改めて否定の姿勢を崩していません。自身に関する処分については「給与カットも含めて検討していきたい」と述べ、事態の幕引きを図ろうとしています。

第三者委員会が認定「知事らの指示の可能性高い」情報漏洩問題の進展

5月27日に発表された第三者委員会の調査結果は、情報漏洩が元総務部長によって行われ、それが斎藤知事を含む関係者の指示である可能性が高いと明確に認定しました。これは、知事側が否定してきた情報の出所や経緯に関する重要な指摘です。しかし、知事はこの調査結果を受け入れず、あくまで自身の関与を否定し続けています。県として元総務部長を処分する一方で、知事自身は責任の取り方として給与カットを検討する意向を示すに留まっています。

兵庫県知事の情報漏洩問題を巡り、厳しい状況に立たされている斎藤元彦知事兵庫県知事の情報漏洩問題を巡り、厳しい状況に立たされている斎藤元彦知事

問題の発端から再選まで:混乱の経緯

この問題の発端は、昨年3月に元県民局長が斎藤知事のパワハラなどを告発する文書を報道機関などに送付したことに遡ります。この告発は後に公益通報に該当すると判断されるのですが、知事は即座に「告発者捜し」を開始し、元県民局長に懲戒処分を下しました。これが問題視され、マスコミで大きく取り上げられると報道は過熱。結果的に、県議会では全会一致で不信任決議案が可決され、斎藤知事は一時失職しました。調査のための百条委員会も設置されていましたが、調査結果を待たずに不信任決議案が提出されたことも大きな議論を呼びました。

失職した斎藤知事でしたが、昨年11月に行われた知事選挙で再選を果たし、知事職に復帰しました。この選挙ではNHK党の立花孝志党首も立候補し、自身は当選する意思がないと表明しつつも、真実を明らかにするためとして斎藤知事を事実上支援しました。いわゆる「2馬力選挙」と呼ばれ、立花氏は選挙期間中、真偽不明な情報や事実ではない可能性のある情報を拡散し、斎藤氏の再選に少なからぬ影響を与えたとされています。今回問題となっている元県民局長の私的情報も、立花氏が拡散した情報の一つでした。

過去の兵庫県知事選で、斎藤元彦候補(当時)を熱心に応援する市民たちの様子過去の兵庫県知事選で、斎藤元彦候補(当時)を熱心に応援する市民たちの様子

選挙後、百条委員会は告発文書にあった知事のパワハラについて「一定の事実が含まれていた」との調査結果を発表。さらに、第三者委員会も外部に送られた文書は公益通報に当たるとし、通報者探しは違法であり、元県民局長への処分は不適正であったと認定しました。しかし、知事はこれらの調査結果を全面的には受け入れていません。

調査結果を「真摯に受け止める」?続く異様な状況と影響

毎週の定例記者会見で、テレビや新聞の記者から違法行為を指摘されても、斎藤知事は「真摯に受け止める」という言葉を繰り返すのみで、具体的な説明や反省の弁を述べることはありません。この状況は3ヶ月以上続いています。

この異様な事態は国政レベルでも取り上げられるようになり、公益通報者保護法を所管する消費者庁からは、メールで斎藤知事に対し「国の公式見解と異なる」との指摘がなされました。しかし、知事は定例会見での記者からの質問に対し、これを「一般的な法解釈のアドバイスとしてメールをいただいたと受け止めている」と回答。国から自身の見解が間違っていると明確に指摘されたにもかかわらず、それを単なる「アドバイス」と捉える感覚は、一般には理解しがたいものです。ここでも彼は「真摯に受け止めたい」と繰り返し、その表情はほとんど変わりません。ある県議からは、「彼のメンタルは鋼鉄を超えた超合金ではないか」と訝しむ声すら上がっています。

国が定めた法律について「自分は別の意見だ」という知事の主張には驚きが広がっており、SNS上では「兵庫県は『斎藤元彦人民共和国』」と揶揄される事態に至っています。この異常な状況は、兵庫県庁にも悪影響を及ぼしており、今年度新規採用された職員の4割超が辞退し、既存職員の退職者も増加していると報じられています。

次の一手は?刑事告発の申し入れと知事の対応

状況から見れば、斎藤知事が辞職するのが妥当と思われる局面ですが、本人にその意向は全く見られません。ならば、再び不信任決議案を提出するしか方法はありませんが、県議会にその具体的な動きは見られません。地元テレビ局の記者によると、「選挙で110万票以上を獲得して再選されており、これは歪められた民意かもしれませんが、簡単に不信任決議案を提出しにくい状況があるのでしょう。また、もし不信任決議が可決されれば議会も解散となり、選挙には20億円以上の費用がかかるとみられます。その辺りがネックとなり、県議会は踏み切れないでいるのでは」とのことです。

この兵庫県の問題についてはYouTubeなどで多くの有識者が言及していますが、政治評論家からのコメントは少ないのが現状です。政治評論家の有馬晴海氏は、以前は「どんな結論が出ても知事は『そういう認識はない』と繰り返すだろうし、罰則もない現状ではこのまま終わるだろう、辞めないだろう」と考えていたそうです。しかし、元総務部長が停職処分を受けたこと、そして情報漏洩の発端から人が亡くなっている事実(直接的な因果関係は不明ながら問題発生後の経過で不幸な出来事があったことを示唆)に触れ、「この処分はあまりに軽い」と感じ、知事を追及しようという市民の盛り上がりが出ていることを聞くと、考えを改めたと言います。「残された方法は住民が裁判を起こすしかないが、ここまで来るとその可能性は高まっている」と語っています。

この言葉を裏付けるように、ここにきて事態は動き始めています。情報漏洩に関して斎藤知事と元総務部長の主張が食い違っているため、県議会の主要3会派(自民党、維新の会、公明党)の幹事長らが会談し、事実関係を明らかにするため、元総務部長を地方公務員法違反の疑いで刑事告発することが必要だとの認識で一致しました。彼らは県に対し、刑事告発の申し入れを行いました。斎藤知事は6月4日の記者会見で、現時点では刑事告発はしない考えを示しましたが、この申し入れによって問題が収束するとは考えにくい状況です。

斎藤元彦知事の今後は、依然として不透明なままです。

出典:FRIDAYデジタル