「共感性高くても没個性じゃない」考える力を育む子育て3習慣

「ウチの子、周りに流されやすいんです…」。こんな悩みは多くの親御さんが抱えています。他者への共感性の高さは、日本の「察する文化」においては非常に役立つ能力である一方、周りに流されたり、自己主張を遠慮してストレスをため込んだりする側面もあります。

しかし、日米で長年教育に携わる船津徹氏は、「共感性の高さは決して没個性とは違う」と語ります。共感性を保ちつつ、子どもが自分らしさ(個性)をしっかりと持ち、周りに流されずに生きていくためには何が必要なのでしょうか?それは、家庭での「考える力」の訓練だと船津氏は強調します。

小さい頃から自分で考え、自分で答えを見つけ、自分の言葉で伝える経験を積むことで、自分は何が好きで、何を大切にし、どんな人生を歩みたいのか、自己理解が深まり、確固たるアイデンティティが育まれます。すると、周りの考えや意見を尊重しながらも、自分の生き方(価値観)を曲げずに追求できる、そんな絶妙なバランス感覚を持った人材として成長していきます。

特に重要なのが、親子のコミュニケーションです。思考力が高い子どもが育つ家庭では、子どもが小さな時から「自分で考える癖」を身につけるための3つの習慣があります。

家庭で「自分で考える癖」をつける3つの習慣

習慣1:小さな選択をさせ、「YES・NO」を明確にさせる

日々の生活の中で、子どもに小さなことから自分で選択する機会を与えましょう。「今日の服はどっちにする?」「おやつの果物はどれがいい?」など、簡単なことから始めます。そして、選んだことに対して「YES」なのか「NO」なのか、自分の意思をはっきりと言葉にさせる練習をします。これにより、自分の好みを認識し、意思表示をする習慣が身につきます。

習慣2:選択の際には、論理的に理由を考えさせる

子どもが何かを選択したり、意見を述べたりした際に、「なぜそれを選んだの?」「そう思うのはどうして?」と理由を尋ねる習慣を持ちましょう。すぐに答えが出なくても、親が一緒に考えたり、ヒントを与えたりしながら、自分の考えを言葉にするプロセスをサポートします。これにより、物事を深く考え、根拠に基づいて判断する力が養われます。

習慣3:自分の本心と向き合って選択をさせる

周りの友達が持っているから、テレビで人気だから、というような理由ではなく、「本当に自分が好きなのか」「自分にとって大切か」という本心と向き合って選択するよう促します。親は子どもの選択を頭ごなしに否定せず、まずは気持ちを受け止めた上で、「本当にそれで良い?」「自分の気持ちはどう?」と問いかけ、自己の内面と向き合う大切さを教えます。
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このような習慣を親子の会話の中に意図的に織り込むことで、子どもは「テレビやインターネットでこう言っているから」「権威のある人がそう言っているから」「頭の良い友だちが言っているから」といった外部の情報や他者の意見に安易に流されるのではなく、事実や根拠に基づいて、自分の意思で物事を決められるようになります。その結果、周囲と良い関係を保ちながら、自分らしい人生を切り開いていくことが可能になるのです。

家庭で子どもと向き合い、考える力を育む親子の様子家庭で子どもと向き合い、考える力を育む親子の様子

「強み育て」こそが子育て成功の鍵

子どもが社会の変化に翻弄されず、自分らしく幸せに生きていくためには、失敗や挫折に負けない「たくましさ」を確立しなければなりません。一生ものの武器となるこのたくましさは、家柄、血筋、遺伝といった要因ではなく、「子どもの潜在的な強みを引き出すこと」で育つと船津氏は断言しています。

つまり、子育てで最も優先すべきは、この「強み育て」なのです。強みは、音楽でもスポーツでも勉強でも、子どもが情熱を注げるものであれば何でも構いません。そして、習い事は、子どもの強みを見つけ、それを集中的に伸ばす最高の機会となります。だからこそ、子育て成功のカギは適切な習い事選びにあると言えるでしょう。

結論

共感性が高いことは、決して個性の欠如を意味するものではありません。むしろ、家庭で「考える力」を意識的に育むことで、子どもは他者を尊重しつつも、揺るぎない自分らしさを持ったたくましい人間に成長します。小さな選択をさせ、理由を考えさせ、本心と向き合う習慣を日々の親子のコミュニケーションに取り入れること。そして、子どもの「強み」を見つけ、それを伸ばすサポートをすること。これこそが、変化の激しい現代社会を自分らしく生き抜く力を育むための、最も効果的な子育てのアプローチです。

出典: Yahoo!ニュース