桶川市いじめ重大事態 第三者委報告書公表:教員の不適切行為と市教委の組織課題を指摘

埼玉県桶川市教育委員会は、市立中学校に2019~21年度に通学していた元男子生徒に関するいじめ重大事態の調査報告書(第三者委員会)を公表しました。報告書は、当時の国語教諭が元生徒の吃音(きつおん)の症状をまねて笑うなどの行為が、同級生によるいじめ発生の一因だったと指摘。さらに、市教育委員会内部の「縦割り構造」が対応の遅れを招いたことも問題視しています。

埼玉県桶川市の様子。いじめ重大事態に関する第三者委報告書が公表された現場地域埼玉県桶川市の様子。いじめ重大事態に関する第三者委報告書が公表された現場地域

いじめの具体的な内容と元生徒の状況

報告書によると、元生徒は在学中に複数の同級生から少なくとも5件のいじめを受けていました。19~20年度にかけて、体育の授業中に掛け声をからかわれたり、歌の練習中に歌い方について指摘されたりしました。また、シャープペンシルで何度も足を刺されるといった行為も確認されています。これらのいじめが原因で、元生徒は不登校となりました。

教員の不適切な言動が指摘される

元生徒が1、2年生の時に国語を担当していた教諭についても、報告書は言及しています。教諭が元生徒の吃音やそれに伴う随伴行動をまねたり笑ったりしていた事実を認定し、さらに、授業中に執拗(しつよう)に元生徒を指名したり、体に触れたりするなどの言動を生徒たちの前で行っていたと指摘。これらの教諭の不適切な言動が、同級生によるいじめが発生する一因となったと強く非難しています。

市教育委員会の「縦割り」による対応遅れ

元生徒の母親は、いじめや教諭の不適切な言動について、2020年11月に市教育委員会学務課に相談を持ちかけました。しかし、情報が十分に共有されず、市教育委員会全体としていじめの認知が遅れたことが問題視されています。その原因として、人事や教職員指導を担当する学務課と、いじめ対応などの生徒指導を担当する学校支援課が「縦割り」の関係にあり、共同して問題解決に当たる視点が不足していたと分析されています。学校支援課が本格的に調査に乗り出したのは21年春以降で、事案が「重大事態」として認定されるまでには、2023年8月まで時間を要しました。報告書は、事案発覚当初から課の枠を超えた連携対応が必要だったと指摘しています。

市教育委員会の対応と再発防止策

市教育委員会は、今回の報告書が指摘する教諭の行為がいじめ発生の一因であったとする見解を重く受け止めていると述べています。市立小中学校の校長に対し、事案の共有と再発防止の徹底を求めました。また、「縦割り」構造の反省を踏まえ、2024年度からは学務課と学校支援課をつなぐ新たなポスト「学校教育監」を設置し、組織間の連携強化を図る取り組みを進めていることを明らかにしました。

係争中の損害賠償訴訟

この問題に関連し、教諭の不適切な言動で精神的苦痛を受けたなどとして、元生徒と家族は市と教諭を相手取り、約4400万円の損害賠償を求めてさいたま地裁に提訴しています。訴訟の行方にも注目が集まっています。

調査報告書によって、いじめ問題の背景に教員の不適切行為と教育委員会の組織的課題があったことが明らかになりました。市教育委員会は再発防止策を進めていますが、今後の改善と訴訟の動向が注視されます。

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