創刊70周年を迎えた少女漫画雑誌『りぼん』（集英社）は、小中学生を主な読者層とし、恋愛やギャグなど多様なジャンルの作品で今も昔も多くの“りぼんっ子”たちの心を捉えています。特に1990年代は「りぼん黄金期」として知られ、1994年には少女漫画雑誌として史上最高部数となる255万部を記録しました。この黄金期を支えた功労者の一人が、名作『ハンサムな彼女』や『ママレード・ボーイ』などを世に送り出した漫画家の吉住渉氏です。しかし、吉住氏にはこれら有名作品の陰に隠れた「知られざる名作」も数多く存在します。本稿では、そんな吉住渉作品の中から、彼女の初連載作品である『四重奏ゲーム』に焦点を当て、その魅力に迫ります。
りぼん黄金期を支えた吉住渉先生の代表作「ママレード・ボーイ」アニメのアニバーサリーDVD-BOX画像
吉住渉の原点、初連載作品『四重奏ゲーム』
吉住渉氏の記念すべき初連載作品が『四重奏ゲーム』です。1988年4月号から全3回にわたり『りぼん』本誌に掲載されました。本作は、彼女の代名詞とも言える学園を舞台にしながらも、音楽とミステリーの要素を融合させた斬新な物語を展開します。
シューベルト幻の楽譜を追う音楽ミステリー
物語の舞台は、音楽大学付属の私立中学校。学園内でトップクラスの演奏技術を持つ友成笑、的場類、樫本孝純、安東妙子の4人は、有名なバイオリニスト・伊集院英至の帰国演奏会で弦楽四重奏を披露することになります。彼らが演奏するのは、著名な作曲家シューベルトの未発表曲とされる幻の弦楽四重奏曲「虹」です。特に笑のバイオリンの腕前は、他の3人が息を呑むほど突出しています。
当初はソリが合わない4人でしたが、「虹」の演奏に向けて練習を重ねていくうちに、絆を深めていきます。そんなある日、彼らは学園の一室で古い楽譜を発見します。その部屋は、先日突然失踪した教師・小池の部屋でした。4人は、小池先生の失踪とこの古い楽譜に何らかの関係があるのではないかと疑念を抱き始め、楽譜の謎を解き明かそうと動き出します。音楽の調べに隠された真実を追う、スリリングなミステリーが展開します。
個性豊かな主要キャラクターたち
『四重奏ゲーム』の魅力は、その個性豊かな主要キャラクターたちにもあります。主人公の友成笑は、明るく元気で純粋な性格。音楽への情熱も人一倍強く、天才的なバイオリンの才能を持ちます。的場類はクールで知的な秀才タイプ。樫本孝純は明るくプレイボーイ的な一面も持つムードメーカー。そして安東妙子は、一見ツッパリ風ですが情に厚い美少女です。音楽という共通の情熱を持ちながらも、それぞれ異なる個性を持つ4人の関係性の変化も見どころの一つです。
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ミュージック×ミステリー×ロマンスの魅力
本作は、クラシック音楽、学園ミステリー、そして吉住渉氏らしい繊細な恋愛要素が絶妙にブレンドされています。幻の楽譜「虹」を巡る謎解きが物語の軸となりつつも、思春期の少年少女たちの友情や淡い恋心も丁寧に描かれています。わずか全3回という短い連載ながら、練られたストーリー構成と魅力的なキャラクター描写により、非常に読み応えのある作品に仕上がっています。吉住渉氏の初期の作風や、後の名作に通じるエッセンスを感じ取ることができるでしょう。
結論
吉住渉氏の初連載作品『四重奏ゲーム』は、『ママレード・ボーイ』や『ハンサムな彼女』といった代表作に比べれば知名度は低いかもしれませんが、音楽とミステリー、そしてロマンスを融合させた独創的な世界観を持つ隠れた名作です。短いながらもキャラクター描写やストーリー展開が巧みで、吉住氏の作家としての才能の片鱗が伺える作品と言えます。りぼん黄金期を知る読者だけでなく、吉住渉作品ファンであれば、ぜひ一度手に取っていただきたい一作です。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/0235700199778288b1d648bf7128e2aa827452eb
