ウクライナによる1日のドローン攻撃は、ロシア国内の複数の空軍基地に駐機していた航空機に深刻な損傷を与えたことが、新たな人工衛星画像とドローン映像によって明らかになった。
4日朝に撮影された人工衛星画像からは、ロシア北西部および中部に位置する2カ所の空軍基地で、少なくとも12機の航空機が損傷または破壊されたことが確認された。一方、ウクライナ保安庁(SBU)が同日に公開したドローン映像は、これら2カ所の基地に加え、他の2カ所の基地に対する攻撃の様子も捉えていた。ウクライナ側は、今回の作戦で戦略爆撃機41機を標的とし、「少なくとも」13機を破壊したと主張している。保安当局によると、この大規模な奇襲作戦は18カ月をかけて計画され、多数のドローンが事前にロシア国内にひそかに運び込まれたという。この記事では、新たな画像と映像を基に、攻撃の規模と被害の実態を検証する。
ウクライナのドローン攻撃により損傷したロシアの航空機を示す衛星画像
記録されたドローン攻撃の様子
SBUが公開した映像は、約5分間にわたる編集済みのドローン映像で構成されており、ロシア国内のオレニヤ、イヴァノヴォ、ジャギレヴォ、ベーラヤの各空軍基地に対する攻撃の瞬間や、その直前の様子が記録されている。
各映像では、爆発の瞬間の直前で映像が途切れている場面が多いが、一部の場面では背景で他の航空機が炎上している様子も確認できる。映像が捉えた範囲では、攻撃が明らかに進行しているにもかかわらず、ロシア側の有効な防御措置が確認できる場面は一切なかった。
多くの航空機には機体の上に複数のタイヤがかぶせられている。これは、飛来するドローンからの攻撃、特に爆発による被害を軽減するためのロシア軍の戦術だと考えられている。火災の規模や延焼の状況から判断すると、一部の航空機は巡航ミサイルを搭載し、燃料も十分に積んでいた可能性がある。これらの機体が出撃の準備を整えていたことが推測される。
衛星画像が示す具体的な損傷
今回入手された複数の衛星画像は、ドローン攻撃によるロシア空軍基地への被害規模をより具体的に示している。特に、オレニヤおよびベーラヤの両空軍基地の衛星画像は鮮明で、攻撃の結果が明確に映し出されていた。
オレニヤ空軍基地
ムルマンスク州に位置するオレニヤ空軍基地は、ロシア北西部における重要な空軍拠点の一つである。SBUが公開した映像には、この基地で3機の航空機から煙が立ち上る様子が映っており、これらは戦略爆撃機「TU-95」と特定されている。さらに、別のドローンが4機目の航空機に接近する様子も捉えられていた。また、同じ基地に駐機していた戦略爆撃機「TU-22M」にドローンが接近する場面も映像に収められている。
米民間衛星企業マクサーが提供した衛星画像では、「TU-22M」とみられる航空機が並ぶ列のそばに、明確に破壊された機体が確認できる。注目すべきは、「TU-95」と「TU-22M」が、ソヴィエト連邦崩壊直前の1990年代初頭に製造が終了している古い機体であるという点だ。これらの機体は修理が困難であり、代替機の確保はほぼ不可能とされているため、今回の損害はロシアの戦略爆撃機戦力にとって無視できない打撃となりうる。SBUの映像では、別の場面で輸送機「AN-12」にドローンが接近する様子も確認されている。マクサーの衛星画像にはこの攻撃の結果は直接映っていないが、X(旧ツイッター)上で衛星画像を分析する「アヴィヴェクター」が公開した別の画像をBBCヴェリファイが検証したところ、この「AN-12」も破壊された可能性が示唆されている。オレニヤ基地では、合計で5機の航空機が損傷または破壊されたとみられる。
ベーラヤ空軍基地
4日朝にプラネットラブス社が撮影した人工衛星画像は、ウクライナ国境から約3000キロ離れたロシア・イルクーツク州のベーラヤ空軍基地全体を捉えている。この広範囲を映した画像には、基地内の複数箇所において、ドローン攻撃により損傷したとみられる「TU-95」3機と「Tu-22」4機が確認できる。SBUが公開した映像にも、これらの機体に対してドローンが接近し、攻撃を加える様子が記録されていた。
特に映像の中では、ドローンが2回にわたって、「Tu-95」の燃料タンクのすぐそばにある翼に慎重に降りるように接近する場面が確認されている。これは、最も効果的に機体を破壊することを狙った攻撃であった可能性を示唆している。映像の最後には、ベーラヤ基地内の複数地点から煙が立ち上る様子が映し出されており、攻撃の成功と損害の発生を裏付けている。ベーラヤ基地では、合計で7機の航空機が損傷または破壊された様子が衛星画像で確認された。
その他の基地における状況
SBUのドローン映像は、上記の2カ所の他、さらに2カ所の空軍基地に対する攻撃の様子も捉えていた。しかし、これらの基地における損害については、現時点では明確な証拠が得られていない。
イヴァノヴォ空軍基地
イヴァノヴォ州中部に位置するイヴァノヴォ空軍基地では、早期警戒管制機「A50-AWACS」2機が標的となった様子が映像で確認された。「A50」は機体上部に大型のレーダーシステムを搭載しており、広範囲の航空状況を監視する「スパイ機」としてロシア軍にとって非常に価値の高い機体である。ウクライナは過去に、2024年1月と2月に同型機を2機撃墜したと発表している。しかし、今回のドローン攻撃に関して、イヴァノヴォ基地における「A50」の損傷を明確に示す映像や画像は、現時点では確認されていない。同基地の衛星画像には機体の残骸が映っている場所があるが、BBCヴェリファイの検証によると、これらの残骸は今回の2日の攻撃以前から存在しており、別の事案によるものとみられている。
ジャギレヴォ空軍基地
リャザン州中部のジャギレヴォ空軍基地で撮影されたSBUの映像には、「Tu-22」3機にドローンが接近する様子が映っている。しかし、入手可能な映像および衛星画像のいずれによっても、これらの機体が今回の攻撃によって損傷を受けたことを明確に示す証拠は確認されていない。
結論
ウクライナによるロシア国内の空軍基地へのドローン攻撃は、人工衛星画像とSBUが公開したドローン映像という複数の情報源によってその規模と効果が検証された。特にオレニヤおよびベーラヤの両基地では、合計少なくとも12機の戦略爆撃機やその他の航空機が損傷または破壊されたことが画像から明確に確認できた。これらの被害機の中には、代替が困難な旧型戦略爆撃機が含まれており、ロシアの航空戦力にとって実質的な損害をもたらす可能性が高い。イヴァノヴォおよびジャギレヴォ基地に対する攻撃も映像で記録されていたが、これらの基地における具体的な機体の損傷については、現時点では衛星画像などによる明確な裏付けは得られていない。今回の検証は、ウクライナのドローン作戦がロシアの軍事インフラに対し、地理的に離れた地点においても影響を及ぼしうることを改めて示している。
(ポール・ブラウン記者、トーマス・スペンサー記者、BBCヴェリファイ(検証チーム))