芸人・三又又三(58)テレビ出演減で不動産会社へ 「30歳下上司」との奮闘日々

千葉県船橋市にある不動産会社の一室に、お笑い芸人・三又又三氏(58歳)の姿があった。還暦を目前に、長年身を置いてきた芸能界とは異なる世界で、年下の先輩社員と共に日々奮闘している。本記事では、テレビ出演が減り、収入が激減したことで新たな道を選んだ三又氏の不動産会社での働きぶりと素顔に迫る。彼はかつて芸人仲間から「クズ芸人」と揶揄されたこともあったが、ここではどのような顔を見せているのだろうか。

都心へのアクセスの良さと生活の利便性から、ファミリー層に人気の高いJR総武線下総中山駅。三又氏が勤務する「テイルハウジング」はここにある。彼がこの会社で働き始めてから1年半以上が経過したという。

当初は全く慣れず、特に自分より30歳も年下である直属の上司との関係に戸惑ったと語る三又氏。働き始めて2、3ヶ月で帯状疱疹が頭にでき、病院でストレスが原因だと診断されたというエピソードも明かした。

出社後はまずメールチェックから始まる。三又氏にとって、テイルハウジングでの仕事は58歳にして初めてパソコンに触れる機会となった。「一番これが大変です」と、慣れない作業に苦労している様子を伺わせた。

芸人・三又又三(58)テレビ出演減で不動産会社へ 「30歳下上司」との奮闘日々千葉県船橋市の不動産会社で働くお笑い芸人・三又又三氏

不動産会社での新たな挑戦

メールチェックの後は店舗の窓拭きを行う。入社当初からずっと続けている作業だ。「身だしなみも大変でした。何十年ぶりじゃないですか?ポロシャツインするの」と笑いながら語る。全てが初めての経験で、毎日が驚きと戸惑いの連続だったという。

朝礼では、その日の行動予定を全員の前で発表する。店長が朝礼開始の声をかけると、三又氏も他の社員と共に「おはようございます」と応じる。そして「本日の行動予定ですが、10時から12時半まで店頭対応、LINEの登録していきたいと思います。12時半から酒井ご夫婦を三信さんとご案内します。18時開発部の報告…」と、滞りなく報告を終えた。店長が「今日も一日宜しくお願い致します」と言うと、全員が応え、朝礼は終了する。

30歳年下の上司から学ぶ日々

三又氏の直属の上司である三信さんは、彼より30歳年下だ。「こちら僕の直属の上司の三信さんです。今日も一緒に動きます」と紹介する三又氏に対し、三信さんは「三又さん、運転免許持ってないんで」と、共に外出する際の状況を語った。三又氏は運転免許だけでなく、宅建資格も持っておらず、パソコンも苦手だ。「それでも雇ってくれる会社。感謝しかないですよね」と、自身の状況を受け入れつつ、会社への感謝の気持ちを口にした。

芸人・三又又三(58)テレビ出演減で不動産会社へ 「30歳下上司」との奮闘日々不動産会社で書類やパソコンに向き合うお笑い芸人・三又又三氏(58歳)

三又氏は現在、週5日フルタイムで勤務している。主な業務は、将来の開発や販売に繋がる有望な土地を見つけ、購入する「土地の仕入」作業だ。不動産業者向けのサイト「レインズ」を使い、売り出し中の物件情報を確認し、関係業者に連絡を取るのが日課だ。しかし、彼がいいと思っても、上司や社長からは「どこがいいの?」と指摘されることも多いという。

接客業での意外な一面と入社の経緯

土地仕入れの他に、来客対応も三又氏の重要な仕事の一つだ。お笑い芸人としての経験がここで活かされる。彼は「テイルハウジングに入って、こんな自分がいたんだって」と、新たな自分を発見したと語る。特に子どもの対応には最初は戸惑ったが、今では「めっちゃできるっていうか、大好きです」と、意外な適性を見せている。

また、接客を通じて夫婦の姿を見るにつけ、「夫婦っていいなとか。でもまだ(結婚は)諦めてないです」と、自身の結婚観についても触れた。

三又氏が不動産業界で働くことになったきっかけは、収入が激減し、賃貸契約が難しくホテル暮らしを余儀なくされていた時期に、以前から知り合いだった今の会社の社長から声をかけられたことだった。社長は三又氏の状況を察し、「家ないんでしょ?」「じゃあうちの物件借りれば?保証人俺でいいから」と提案。さらに「うちで働く?」と誘われたという。三又氏は白血病で兄を亡くし、両親も他界しているため、自分は天涯孤独だと感じていた時に社長から声をかけられたことで、深い感謝の気持ちを抱いている。

同僚・社長が語る「三又又三」の素顔

職場の同僚たちは三又氏をどのように見ているのだろうか。後輩からは「あの三又さんが奢ってくれるんですよ」という意外な証言が。テレビのイメージとは異なり、中華料理が好きで、ラーメンとチャーハンを「シェア」して奢ってくれるというエピソードが語られた。

別の同僚は、彼の仕事ぶりについて「パソコンのキーボードを触って、指だけ動いてボタンを押してない、キーボードを押せない。そこから5分経つとタバコ吸う。タバコ吸い終わったら10分パソコンに向き合って、触っているふりをしてまたタバコを吸う」と、苦労している様子を具体的に語った。

さらに、「すぐキレるんですよ。たまに情緒不安定になる。あとは暇さえあれば、下ネタばっかり言ってる」といった暴露話も。しかし、「良いところはやっぱりメンタルが強いですよね。色々あっても、人と仲良くいかなくても、だけどコミュニケーション取っていくんですよね」と、彼のポジティブな側面も評価している。支店長は「いるだけで雰囲気は和やかになりますね」と、ムードメーカーとしての存在感を認めている。

三又氏を雇うことを決めた社長は、彼の勤務態度について「ずっとは座ってないですね。座ると寝ちゃうんで」と指摘。社長自身は笑い話にできるが、周りの社員は「本当にいい加減にして欲しいよね」と感じていることを明かした。専門的な知識は無いが、「コレ(喋り)がすごいんでお客さんと近付くレベルは早いかもしれないですね」と、コミュニケーション能力の高さを評価。「やっといいこと言った(笑)」と三又氏が応じる場面もあった。

社長は彼の良い点として他に「自転車を漕ぐのが早い」ことを挙げた。ある時、ものすごいスピードで自転車を漕いでいる三又氏を見てどうしたのかと思ったら、57歳で携帯が止まってしまい、ドコモショップに支払いに行っていたという。社長は彼にお金もたくさん貸しているそうだが、「ただ一番のムードメーカーなので」と、彼の存在が職場にもたらす良い影響を強調した。三又氏はこれに対し「もうちょっとください…(笑)」と返し、場を和ませた。

収入の現状と「還暦ブレイク」への期待

過去と現在の収入について問われると、三又氏は「『ました』ってさっきから過去形じゃないですかあなた。打ち合わせの時からイライラしてたけど。今も稼いでるよ、不動産やばいからね。…俺以外」と、自虐的ながらもユーモアを交えて答えた。

年下の上司からは「これからですよね。いつドーンっていくんでしたっけ?」と将来への期待を向けられると、三又氏は「還暦ブレイク!還暦ブレイク!」と力強く宣言した。声が大きいと指摘されると、「俺のライブ見たよね?映像でどう思った?面白いじゃん」と自身の芸に対する自信を見せた。取材者も「面白いです」と応じた。

「俺が今一番悩んでいるのは、俺今めちゃくちゃ面白いのにそことお笑いの仕事が比例してない!いかんせん面白いので。『ダメだ、俺面白くない』ならやめてますけど、面白いんだもん」と、現状への不満と、それでも芸人としての自信を語る三又氏。「60歳でブレイクしないわけないじゃん」と、改めて「還暦ブレイク」への強い決意を示した。学生時代に見ていた「ボキャブラ天国」などを引き合いに出し、「あれなんて地に足ついて無いからね?今地に足ついてアレよ?」と、現在の自身の芸が地に足ついていることを強調し、未来への期待を語った。