フジテレビが設置した第三者委員会による調査報告書が今年3月31日に公表された。それから約1カ月半の沈黙を経て、中居正広氏(52)側は同報告書による「性暴力」認定に異議を唱え、反論を開始した。認定の根拠に問題があるとして証拠開示を求めるなど、この問題は新たな局面を迎えている。
問題の発端は昨年12月の週刊文春による元フジテレビ女子アナウンサー(女性A)とのトラブル報道が発端だ。中居氏は今年1月23日に責任を取る形で芸能界引退を発表した。
調査報告書では、このトラブルをWHOの定義に基づき「業務の延長線上に起きた性暴力」と認定した。中居氏側は一時沈黙していたが、5月12日に代理人弁護団を通じ反論文書を発表。「性暴力」認定は「中立・公平性に欠け極めて大きな問題がある」と指摘し、認定に関する証拠の開示を求めた。
中居正広氏に関するニュース報道の一場面
これに対し、第三者委員会は5月22日に証拠開示を拒否する意向を示したが、中居氏側は23日、30日と再度開示を要求。その中で、「メールで『勇気づけられた』等のお礼をもらうような関係」だったなど、「業務の延長線」ではないことを主張した。
しかし、第三者委員会は6月3日、女性Aへの二次被害の危険性も指摘しつつ、改めて開示しない旨を回答。今後のやりとりには対応しないことを明言し、交渉は“打ち切り”状態となった。
「スイートルームの会」でのセクハラ認定
そんななか、実は中居氏側が5月12日の反論以降、現在まで一切触れていない「もう一つの重大なセクハラ」疑惑が調査報告書に記されている。それは「重要な類似事案(1)」として挙げられた、2021年12月18日に都内の高級外資系ホテルで開催された「スイートルームの会」だ。
報告書によると、フジテレビの「有力な番組出演者」U氏の依頼を受け、当時の同社編成幹部B氏が主催した飲み会で、U氏、中居氏、女性Aを含む4名の女性アナウンサー、B氏らフジテレビの社員が参加した。
女性Aと別の女子アナウンサーは途中で退出したが、午後10時ごろ、中居氏がB氏ら社員に退出を促し、部屋にはU氏、中居氏、女子アナウンサーのQ氏とR氏の4名だけが残る形になったとされる。
第三者委員会へのQ氏の証言として、R氏にU氏がついていき2人が離席した後、Q氏と二人きりになった時間帯に、中居氏からQ氏の膝や肩、鎖骨付近に手を触れる、顔を近づける等の行為があり、Q氏は機嫌を損ねないようかわしながら対応したと記されている。
中居氏側はこれを否定しているが、第三者委員会は中居氏の「記憶が全体的に薄い」「曖昧な回答」「信用性に欠ける」供述を挙げ、客観的証拠や他のヒアリング結果から「セクシュアルハラスメント」と認定した。
フジテレビは6月5日、女性Aとのトラブルに関与したと報じられたB氏に4段階の降職と1カ月間の懲戒休職を命じる処分を発表。処分の根拠となる非違行為の一つとして、この「スイートルームの会」を挙げている。
同社の清水賢治社長は囲み取材で、「スイートルームの会」について「(B氏)自身の行為ではないけど、管理監督者としてハラスメントが起こる可能性を予防できなかったという罪」と説明した。
第三者委員会との交渉は打ち切りとなったが、中居氏側が名誉回復のため次の手を打つ可能性は予想される。しかし、これまでの反論で「スイートルームの会」でのセクハラ認定に一切触れていない点は注目される。自身の行為ではない管理監督責任でも重い罪とされる中、果たして中居氏が本当に名誉回復できる日はくるのだろうか。