米国の新たなミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」計画が、安価なドローン攻撃への対策として有効ではない可能性が、複数の軍事専門家らの分析で指摘されています。最近のウクライナによるロシア内陸部へのドローン攻撃は、こうした懸念を具体的に示す事例となりました。ニューズウィーク誌が2日(現地時間)に報じたところによると、米国の軍事評論家たちは、ウクライナの「クモの巣」作戦が「ゴールデン・ドーム」計画の非現実性を露呈したと指摘しています。同誌は「ウクライナは、伝統的な防衛戦術では容易に対応できない、未来の戦争の姿を全世界に示した」と伝えています。
ウクライナのドローン作戦が示す新たな戦争の形
未来の戦争の形態について、米外交関係委員会のマックス・ブート上級研究員は先月31日、ワシントンポストへの寄稿で警鐘を鳴らしました。「未来の戦争は、巨大な宇宙を基盤とするミサイル防衛網ではなく、安価な使い捨てのドローンの集団によって戦われることになるだろう」と述べています。ニューズウィーク誌は、このコラム発表の翌日に発生したウクライナによる大規模なドローン攻撃が、ブート氏の主張を裏付ける結果となったと報じました。ウクライナ軍は1日(現地時間)、数千キロメートル離れた地点を含むロシア領土内の軍事施設4カ所に対し、大規模なドローン攻撃を成功させました。「クモの巣」作戦と呼ばれるこの攻撃は、1941年の日本軍による真珠湾攻撃になぞらえ、「ウクライナ版真珠湾攻撃」とも称されています。
トランプ政権の「ゴールデン・ドーム」計画とその脆弱性
ドナルド・トランプ前米国大統領は、任期中に新たなミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」を実戦配備する計画を先月20日に発表していました。この計画の中核は、既存の地上・海上基盤システムに加え、宇宙基盤の防衛システムを統合することにあります。米議会予算局は、仮にこのプロジェクトが実現可能だとしても、今後20年間で8300億ドル(約118兆円)もの巨額な費用が必要になると推算しています。しかし専門家は、1機あたり100万ウォン(約10万円)にも満たない費用で製造できる安価なドローンは、「ゴールデン・ドーム」のような高価なミサイル防衛システムでは阻止できないと指摘します。マックス・ブート氏はワシントンポストへの寄稿で、「トランプ大統領の巨額で非実用的なゴールデン・ドームの防壁は忘れ去るべきだ。ドローンこそ戦争の未来だ」と断言しました。さらに、「ウクライナがロシアのような監視国家の主要空軍基地にドローンを秘密裏に潜入させられたのなら、中国が米国の空軍基地に同じことをするのを何が防げるのか」と問いかけました。戦略国際問題研究所(CSIS)のドローン戦専門家であるザカリー・カレンボーン氏もニューズウィークに対し、「中国による同様のドローン攻撃は十分に懸念に値する」と述べています。
アイアンドームとの比較と今後の軍拡競争への影響
「ゴールデン・ドーム」計画の効果については、イスラエルの「アイアンドーム」をモデルにしているというトランプ氏の発言に対しても疑問が呈されています。「アイアンドーム」はイスラエルのような小規模な国でこそ有効なシステムであり、主に低速の無誘導ミサイルなどを対象としている点が指摘されています。これは、最新の超音速ミサイルを標的とする「ゴールデン・ドーム」とは性格が異なるとの見方です。英国のシンクタンク「王立国際問題研究所」(チャタムハウス)の国際安全保障プログラム研究員であるジュリア・クルノイエ氏は、このような米国の動きに対し、「中国やロシアも攻撃用兵器を拡張するなど、様々な対抗措置を取りうる」と分析しています。こうした軍拡競争が、宇宙空間における各国の軍事配備を加速させる可能性があると指摘しました。
結論
ウクライナでのドローン攻撃事例は、安価で大量生産可能なドローンの有効性と、従来の高価なミサイル防衛システムの限界を浮き彫りにしました。米国の軍事専門家らは、この現実を踏まえ、将来の戦争はドローン集団が主役となり、高額な防衛システムが期待通りの効果を発揮しない可能性が高いと警鐘を鳴らしています。これは、各国の防衛戦略や投資の方向性を見直す必要性を示唆するとともに、新たな軍拡競争、特に宇宙空間での軍備増強を招く可能性も指摘されており、国際安全保障におけるドローン戦の台頭は、今後の世界情勢を読み解く上で極めて重要な要素となるでしょう。