福岡市 給食 物価高で「寂しい」指摘の背景は? カロリー基準満たすも予算と効率化の現実

物価高が続く中、全国的に学校給食の献立が注目されています。特に福岡市では、ある小学校の給食写真がX(旧ツイッター)上で「量が少ない」「寂しい」と指摘され、議論を呼びました。この「寂しい給食」には、市の基準や物価高騰による厳しい予算の現実が背景にあります。市はこの給食が市の定めるカロリー基準を満たしていると説明しており、見た目の印象と実態との間にギャップが生じています。

福岡市の小学校で「量が少ない」と指摘された唐揚げ1個の給食写真福岡市の小学校で「量が少ない」と指摘された唐揚げ1個の給食写真

福岡市学校給食公社の発表によると、指摘された献立は麦ごはん、鶏の唐揚げ1個、春キャベツのみそ汁、牛乳で構成されていました。この日の給食は合計620キロカロリーあり、市が定める小学校向けの1食あたり600キロカロリーという基準をクリアしています。福岡市教育委員会の給食運営課長は、写真の「見え方はちょっと考えないといけない」と認めつつも、唐揚げは1個あたり約60グラム、155キロカロリーを基準に作られており、「通常の2個分くらいの大きさがある」と説明しています。唐揚げを大きいサイズ1個で提供するのは、味付けや揚げる手間を省き、調理工程を効率化するためであり、これは昭和の時代から続く伝統的な提供方法だといいます。

給食予算の現実と年度による献立の変動

福岡市の小学校給食の予算は、児童生徒1人1日1食あたり289.47円(うち保護者負担分は243.15円)です。給食の現場で働く関係者が最も懸念しているのは、年度末に予算が不足する事態です。このため、年度の初めに当たる4月や5月は、給食の費用を抑えるために比較的控えめなメニューになる傾向があります。予算が計画通りに確保されていれば、年度末にかけて給食のメニューはより充実したものになるという予算運用の仕組みが存在します。

物価高が学校給食の現場に与える影響

九州でも有数の財政力を持つとされる福岡市ですが、近年の物価高騰の影響は学校給食にも及んでいます。同市西区にある石丸小学校の阪井裕美栄養教諭は、物価高の現状について「同じ価格では、以前と同じような献立は立てられない」とその厳しさを語っています。コストを抑えるための工夫として、肉の部位をより安価なものに変更したり、価格が高い青ネギやパセリのような食材は1グラム単位で精密に調整して使用量を減らしたりしています。さらに、加工賃がかかる個包装のパンの使用を避けるなど、様々な方法で経費削減の努力が続けられています。

この福岡市の給食を巡る一件は、見た目の印象と栄養基準を満たすという点、そして物価高が学校給食の現場に与える複雑な影響を示しています。基準を満たしつつも、限られた予算内で最大限の質を提供するための工夫や苦労が日々行われており、それが献立の時期による違いや、時にはSNS上の写真から受ける印象とのギャップとして現れていると言えるでしょう。

参照元

Source: 朝日新聞社