フォンデアライエン欧州委員会、12月発足へ 米中二極化の中、環境、デジタルで欧州復権を強調





27日、欧州議会で演説するフォンデアライエン次期欧州委員長(中央)=フランス・ストラスブール(ロイター)

 【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)の新欧州委員会が27日、欧州議会の承認を受け、12月1日の発足が決まった。フォンデアライエン新委員長は承認を前に、環境対策やデジタル化推進で、「欧州を再出発させる」と公約した。米中二極化が進む世界で、EUが埋没することへの強い危機感をにじませた。

 フォンデアライエン氏の看板政策は、「欧州グリーンディール」。温室効果ガス排出量を2050年までに「実質ゼロ」にする目標を掲げ、研究開発に大規模投資を行い、EUに雇用を創出する計画だ。27日、欧州議会の演説で「新技術を開発し、新たな市場を作る。世界基準を決めるのはわれわれだ」と訴えた。

 人工知能(AI)や次世代スーパーコンピューター開発への意欲も示した。「われわれは競争相手に比べ、技術に投資してこなかった。それがハンディになっている」として、EUが米中の技術競争に乗り遅れたことを認めた。「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業を念頭に、個人データの保護を進めるとも述べた。

 フォンデアライエン氏は就任早々、内憂外患のEUで困難なかじ取りを迫られる。

 最初の関門は来年1月末に予定される英国のEU離脱。欧州統合の歴史で、加盟国脱退は初めてとなる。さらに、統合を牽(けん)引(いん)する独仏は、安全保障やユーロ政策で対立が表面化。同氏が環境政策を打ち出すのも、独仏結束が期待できる分野の一つだから、という事情がある。

 トランプ米政権とEUの摩擦は強まる一方で、同氏にとっては気の重い課題だ。米国は鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税に続き、先月には航空機の補助金問題で報復関税を発表した。対中政策でEUは今春、「中国は競争相手」と位置付ける新戦略を策定したが、仏独が対中警戒を強めるのに対し、ギリシャや東欧は投資誘致に熱心で、足並みがそろわない。

 欧州委発足が予定より1カ月遅れたことも、議会運営の難しさを浮き彫りにした。

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