和田秀樹氏が新政治団体「幸齢党」結成、参院選で高齢者政策を訴え

高齢者医療を専門とする精神科医で、『80歳の壁』などのベストセラー著者である和田秀樹氏(65)が、自身が代表を務める政治団体「幸齢党(こうれいとう)」の結成を正式に発表しました。9日に東京都内で開かれた記者会見で明らかにしたもので、今夏の参議院選挙には10人の候補者を擁立する方針です。和田氏自身は立候補しない意向を示しており、参院選では主に高齢者を元気にするための政策を重点的に訴えていくとしています。

政治団体結成の背景と目的

記者会見には、和田氏のほか、共同発起人である元三重県松阪市長の山中光茂医師や、立候補予定者5人が出席しました。和田氏は、これまで著書を通じて高齢者の生き方や社会問題について発信してきましたが、書籍だけでは社会への影響力に限界があると感じ、政治という手段を通じて変革を目指すために今回の政治団体立ち上げに至ったと経緯を説明しました。結成の目的として、「無駄な薬や検査を減らし、若い世代が夢を持てる、そして高齢者が活気あふれる社会を実現したい」と述べ、高齢者が「幸」せに「齢」を重ねられるようにという願いを込めて「幸齢党」と命名したことを明かしました。

発起人 山中光茂氏の視点

共同発起人の山中医師は、幸齢党結成の意義について「既得権益によってがんじがらめになっている政策を打ち破るのが幸齢党の主旨だ」と強調しました。さらに、「それによって財源を改革し、医療や介護の現場に適切にお金が流れるシステムを構築する。こうした改革を実行できるのは、空気が読めない人物。空気が読めない和田秀樹氏だからこそ、真の改革が可能だと信じている」と、和田氏への期待を語りました。

参院選に向けた主要政策

幸齢党が参院選で掲げる政策は、現時点で主に10項目にわたります。現在の臓器別診療中心の医療体制を、患者全体を診る総合診療へとシフトさせ、全都道府県に総合診療医の養成学校を設置することを目指します。また、高齢者の心身のケア体制を強化し、診療科ごとに重複して薬が処方される現状を見直すことで、医療費の大幅な削減を図り、これにより現役世代の負担軽減につなげる考えです。

その他にも、高齢者の健康増進を目的とした「散歩しやすい街づくり」の推進や、ポルノ規制の緩和など「男性ホルモンを増やすための施策」も政策として訴えていくとしています。

新政治団体「幸齢党」結成記者会見で政策を語る精神科医の和田秀樹氏新政治団体「幸齢党」結成記者会見で政策を語る精神科医の和田秀樹氏

和田秀樹氏の略歴

和田秀樹氏は大阪府出身で、東京大学医学部を卒業後、アメリカへの留学などを経験。現在は東京都内で「和田秀樹こころと体のクリニック」の院長を務めています。長年にわたり高齢者医療に携わっており、『80歳の壁』、『ぼけの壁』(いずれも幻冬舎新書)をはじめとする著書も数多く発表しています。

記者会見の様子

和田氏は記者会見に先立ち、自身のYouTubeチャンネルで、会見の案内を送付した報道各社からの反応が鈍いことを明かし、「私が単に人気がない、あるいは世間にあまり関心を持たれていないのかもしれない」と述べていました。しかし、9日の記者会見には予定を上回る約50人の記者らが出席し、新党結成への関心の高さがうかがえました。

幸齢党の結成と参院選への候補者擁立は、高齢化が進む日本社会において、医療や社会保障制度への新たな視点と具体的な政策提言を求める声に応える動きとして注目されます。