自民党広報Xアカウント、岸田氏の「前総裁」表記巡り謝罪と訂正―石破氏への「当てつけ」憶測も

高市政権の発足後、党の広報戦略において存在感を増している「自民党広報」の公式Xアカウントが、投稿における肩書きの誤表記で波紋を呼び、謝罪・訂正を行いました。この一件は、党内の微妙な力関係や思惑を巡る憶測を呼んでいます。

岸田氏の肩書き誤表記が波紋呼ぶ

問題の投稿は11月21日に行われ、党日本成長戦略本部で本部長を務める岸田文雄元首相(68)が、高市早苗首相(64)に対し、官民一体での「強い経済」実現に向けた提言を申し入れたことを報告しました。投稿には提言書を手にする岸田氏、高市氏、そして戦略本部幹事長の木原誠二氏(55)、副部長の上川陽子氏(72)らが並んだ集合写真が添えられていました。

問題視されたのは、岸田氏の肩書きが《党日本成長戦略本部(本部長・岸田文雄前総裁)》と記載されていた点です。現在の自民党では、現職の直前を「前」、それ以前を「元」と区別するのが通例であり、「前総裁」は石破茂氏(68)を指します。この誤表記に対し、X上では「石破茂氏に失礼だ」「前と元の違いは当然ご存知のはず」といった指摘が殺到。投稿には《自由民主党の前総裁は、石破茂衆院議員です。岸田文雄衆院議員は2代前の総裁であり、「元総裁」と書くのが適切です》というコミュニティノートも付記されました。

岸田文雄元首相、高市早苗首相、木原誠二氏、上川陽子氏が提言書を手にする集合写真岸田文雄元首相、高市早苗首相、木原誠二氏、上川陽子氏が提言書を手にする集合写真

広報アカウントが謝罪と訂正、憶測飛び交う

批判の声が広がる中、自民党広報は23日に問題の投稿を削除。その上で、《【お詫びと訂正】11/21に投稿した記事内容の一部に誤りがありました。お詫びし訂正させて頂きます。ご指摘をいただいた皆さま誠にありがとうございました。正)岸田文雄元総裁 誤)岸田文雄前総裁》と謝罪し、岸田氏の提言申し入れについて改めて報告しました。

しかし、この謝罪後も、一部では今回の誤表記が石破茂氏への「当てつけ」ではないかという憶測が飛び交いました。「自民党広報が野党みたいな嫌がらせしてんじゃないよ」「石破隠しか?」といった声が上がったのです。

背景にある政治的力学と今後の課題

政治部記者によると、高市氏と石破氏は2024年の総裁選で決選投票を戦い、政治的スタンスも大きく異なります。加えて、石破氏が高市政権のコメ政策や高市氏自身の「台湾有事」発言についてメディアで苦言を呈している経緯があります。こうした背景から、広報部内に石破氏を快く思わない関係者がおり、意図的な誤表記に繋がったと考える向きもあるようです。

作為があったとは考えにくいものの、高市政権発足以降、自民党広報のXアカウントはかつてないほど注目を集めています。今回の件は、公式アカウントの細部にわたる情報発信がいかに重要であり、党内の微妙な政治的力学に影響を与えかねないかを改めて浮き彫りにしました。今後は、一層の正確性と慎重な運用が求められるでしょう。