米価高騰とコメ卸業者の「異常な利益」報道に流通専門家が警鐘:本当の要因は?

農産物の流通に詳しい流通経済研究所の主席研究員、折笠俊輔氏が6月10日放送の日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」に生出演し、米価高騰の背景で報じられたコメ卸業者の利益に関する一部の見方に対し、自身の見解を述べ、注意を促した。

情報ライブ ミヤネ屋の放送局である日本テレビの社屋外観情報ライブ ミヤネ屋の放送局である日本テレビの社屋外観

小泉農相の指摘と報道された決算情報

ことの発端は、小泉進次郎農相が6月5日の衆院農林水産委員会で行った発言だ。小泉農相は特定の企業名を挙げず、「社名言いませんけどコメの大手卸売業者の売上高、営業利益は500%ですよ」と述べ、米価高騰が続く中で一部の業者が莫大な利益を上げていることを指摘した。

番組では、あるコメ卸業者の今年第1四半期(1~3月)の決算短信を紹介。それによると、この期間の売上高は前年同期比130%増の約312億円、営業利益は同490%増の約20億円に達したとされる。

米価高騰に関する発言をした小泉進次郎農林水産大臣の肖像米価高騰に関する発言をした小泉進次郎農林水産大臣の肖像

流通専門家・折笠氏の見解

MCの宮根誠司氏が、この決算数字について「インパクトのある数字ですが、実はそんなに今まであまりもうけてなかったけど、やっと一息つけたという数字ではないか」と折笠氏に質問を投げかけた。

折笠氏は、自身も同じデータを確認したとした上で、「この業者さん、昨年の営業利益率、2%なんですよ。今年のこの数字の時、6%になった」と説明。前年がわずか2%の営業黒字であった業績が、四半期で6%の営業利益率になったに過ぎないと指摘した。

その上で、営業利益が490%増という数字だけを見て、「お前が高騰の原因だ」と非難するのは「ちょっとかわいそう」だとし、企業活動としては「ある意味、当然の数字を上げたにすぎないと思います」と同情的な見方を示した。

高騰の真の要因への警鐘

折笠氏は、このような特定の数字に過度に注目し、「踊らされすぎると」、米価高騰の「本当の要因は分からなくなる」と強く警鐘を鳴らした。つまり、卸業者の利益増は結果論に過ぎず、価格高騰の根深い原因は別にある可能性が高いとの考えを示唆した。

まとめ

今回の報道は、小泉農相の発言をきっかけに、コメ卸業者の営業利益急増に焦点を当てたものだが、流通経済研究所の折笠俊輔氏は、利益率自体は依然として高くなく、前年の低迷からの回復という側面もあると指摘。こうした数字の表面的な増減に惑わされず、米価高騰を引き起こしている本質的な要因に目を向けるべきだと訴えた。


参考文献