「どうする? もう一泊できるで」 スタッフを驚かせたロケ先での明石家さんまの一言


 さんまと公私ともに長い時間を過ごしてきた元日本テレビプロデューサーで映像プロデューサーの吉川圭三氏の新著『人間・明石家さんま』をもとに見てみよう(以下、同書より再構成しました。文中敬称略)。

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さんま、「ダーツの旅」に出る

 これは、私が日本テレビのスタッフから聞いた話だ。所ジョージ司会の「笑ってコラえて!」の「日本列島ダーツの旅」という企画にさんまがロケゲストとして初めて出演したときのことである。
 
 ご存じの方も多いと思うが、この番組では所が日本地図に向かってダーツを投げて、刺さった全国各地の市町村にロケに行く。通常は番組スタッフが取材に赴くのだが、特番ではさんまが現地を訪れるのが年末恒例になっている。突然田舎に芸能界屈指のスターが現れるのだから、現地は大騒ぎである。
 
 これはそもそも、私の乱暴な思いつきで始まった企画だった。スタジオを主戦場とするさんまには不躾(ぶしつけ)ともいえるオファーだったが、さんまは即決即断でGOを出してくれた。「さんま御殿」はタレントが相手、「恋から」であっても素人とはいえ全国オーディションを経て「面白い女性・ツッコミどころがある女性」を選んでいる。それに引き換え、「ダーツの旅」はぶっつけ本番、出会う素人の「村人」たちはオーディションどころかネタ打ち合わせのための事前アンケートすら取っていない。まさに出たとこ勝負の通りすがりの村人である。「さんまちゃんの日本ダーツの旅。当然、これはインパクトがあるよね」と所が言った通りである。
 
 しかし、「ごく普通のおじさん」「ごく普通のおばさん」「ごく普通の子供」からさんまが見事に笑いを引き出してゆく様子を私たちスタッフは何度も目撃してきた。

 さんまは、何の情報もないまま村人達を最高に面白く“料理”してしまう。まさに楽屋トーク、雑談芸が最高に活かされる舞台だったのだ。百聞は一見にしかずではあるが、その内容は毎回大盛り上がり。VTRを見るスタジオのタレントや観覧者も沸きに沸く。さすがである。

 一方で、その収録は「超」がつく強行軍だ。おおむね、早朝に東京を出発し、現地でロケがスタートするのが午前9時~10時というのが平均的。当然ながら、人気者のさんまはスケジュールがパンパンに詰まっているため、その日の夕方頃までにロケをこなし、日帰りで東京に戻らねばならない。



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