近頃、日本の店頭で異様な光景が目撃されています。スーパーやコンビニエンスストアに、政府が備蓄していたコメが並べられ、それを求める人々が開店前から長蛇の列を作っているのです。これは単に安価なコメを買い求める動きなのでしょうか、それともより深刻な事態を示唆しているのでしょうか。
店頭に並ぶ「政府備蓄米」の光景
開店前のスーパー前に長蛇の列ができ、客が一斉にコメ売り場へ向かう。山積みの袋には「政府備蓄米」のシールが貼られ、店員が手渡していく様子が報じられています。
千葉市のショッピングモールで行列する人々
コンビニエンスストアでも1キロ、2キロと小分けされた精米が並び、見かけた客が次々と手に取り、わずか1〜2時間で完売するという状況です。
コメ価格高騰への対応策
この店頭販売は、コメ価格の高騰が続く中で、当時の小泉進次郎農林水産大臣が主導した政府備蓄米の随意契約による放出措置として開始されました。市場価格を抑えるための一時的な対応と考えられています。
安価なコメに行列が示すもの
しかし、「政府備蓄米」の袋を奪い合うように手にする人々の映像は、単に「安いコメを買いたい」というレベルを超え、まるで日本が食糧危機に陥っているかのような印象を与えます。事情を知らない外国人には、そう見えても不思議ではありません。実際、一般消費者が通常価格のコメを容易に買えない状況下で、政府放出米に頼らざるを得ない状況は、まさに食糧危機の一端を示していると言えるでしょう。
大阪市のスーパーで政府備蓄米を求める行列
備蓄米枯渇後の選択肢
さらに、小泉元農水相は、放出可能な備蓄米が残り30万トンとなった場合、外国産米の緊急輸入も検討する意向を示していました。これは、国内供給だけでは需要を満たせなくなる可能性を政府が認識していることを意味します。
日本の食料自給率と安全保障
カロリーベースで38%という食料自給率の日本において、主食であるコメだけは長らく高い自給率を維持してきました。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉においても、コメは関税撤廃を認めない「聖域」とされる重要5品目の一つでした。これは、食料、特に主食の自給が国の安全保障上いかに重要であるかを示しています。
食料を自給できない国とは
かつて、米国第43代大統領ジョージ・W・ブッシュ氏は、「国民を養うのに十分な食料を生産できない国を想像できるか? それは国際的な圧力と危険にさらされる国になるだろう」(Can you imagine a country that was unable to grow enough food to feed the people? It would be a nation that would be subject to international pressure. It would be a nation at risk.)と繰り返し述べました。この言葉は、食料自給の重要性を端的に示しており、現在の日本の状況にも重く響きます。
結び:食料安全保障への警鐘
政府備蓄米に行列ができるという今回の事態は、単なる一時的な価格対応の問題として片付けられるべきではないかもしれません。コメという主食にまで国民の購買力が追いつかず、備蓄米や将来的な緊急輸入に頼らざるを得ない状況は、日本の食料安全保障、ひいては国家の安定に対する潜在的なリスクを浮き彫りにしています。今、改めて食料自給のあり方とその重要性について深く考える時期に来ていると言えるでしょう。