小泉農水相の備蓄米放出決定 米価への影響をスーパー社長が解説

政府が有事へ備蓄する古米を含む備蓄米の放出が続いています。小泉進次郎農林水産大臣は、2020年度産(古古古古米)に加え、新たに2021年度産の備蓄米計20万トンを随意契約で売却することを発表しました。この異例ともいえる大量放出は、高騰する国内の米価にどのような影響を与えるのでしょうか。都内でスーパーチェーンを展開し、食料品価格の動向に詳しいスーパーアキダイの秋葉弘道社長に、その見通しと業界の反応を聞きました。

備蓄米放出と初期の市場反応:なぜ価格はすぐ下がらなかったのか?

秋葉社長によると、これまで備蓄米を放出してきた農水省や、その多くを入札してきたJAは、意図的にコメの市場価格を下げることを避けてきた側面があるといいます。そのため、備蓄米は主に学校給食や飲食店など、相場に直接影響しにくいルートに流されてきました。しかし、今回小泉大臣が随意契約という形で大量放出を決めたことにより、「価格が下がるのではないか」という期待感が市場や消費者の間に生まれました。

メディアによる古米放出の報道も、消費者が「コメの価格は頭打ちで、今後は下がるだろう」と考える要因となっています。実際に、小泉大臣が価格引き下げに言及し始めてから、コメのスポット価格は既に下落傾向にあるとのことです。
田植えをする小泉進次郎農林水産大臣田植えをする小泉進次郎農林水産大臣

業界の懸念と改善された供給状況

コメを在庫として抱えるJAや米業者は、現在の在庫を多少でも放出しないと、将来的な価格下落で大きな赤字を抱えるリスクを感じているようです。今回の備蓄米放出は、そうした業者にとって在庫調整を促す圧力となっています。

一方で、これまで懸念されていたコメの入荷状況は改善が見られています。以前は需要に対して7割程度しか供給できなかった状況が、「100ほしいと言えば100用意してもらえる」状況に変化しているといいます。ただし、スーパーの店頭に並んでいるコメの多くは5月に仕入れたものであり、備蓄米放出を受けて在庫を慌てて放出したというよりは、市場全体の流通量が増える可能性を示唆しています。
スーパーアキダイの秋葉弘道社長、備蓄米問題について語るスーパーアキダイの秋葉弘道社長、備蓄米問題について語る

今後の米価見通し:緩やかな下落を予想

業界内では、例年通りであれば6月より7月に米価が上昇し、8月には2024年度産(昨年度収穫)のコメが市場から減少するという見立てがありました。現在の店頭価格は、仕入れ価格に基づいているためまだ大きな変動はありません。しかし、今月の見積もりからは価格がわずかに下がる可能性が見られるとのことです。

秋葉社長は、この状況から7月頃にかけてスーパーの店頭に並ぶコメの価格が、5キロあたり200円から300円程度安くなるのではないかと予想しています。ただし、劇的に価格が落ち込むような状況にはならないだろうという見方を示しています。備蓄米の大量放出は市場に影響を与え始めていますが、その効果は限定的かつ緩やかなものになる可能性が高いようです。

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