国民民主党は6月11日、今夏の参院選比例区での擁立を予定していた山尾志桜里元衆院議員(50)の公認を取り消すと発表した。この決定は、前日に行われた山尾氏の出馬会見が大きな波紋を呼んだ直後のことだった。山尾志桜里氏の公認取り消しに至る背景には、会見での釈明と質疑応答が深く関わっている。
擁立背景と会見に高まる関心
国民民主党は昨秋の衆院選で議席を伸ばしたが、その後は世論調査で支持率が下落傾向にあった。そうした中、5月に発表された比例区候補者、特に山尾氏に対して、過去の醜聞に関する説明不足を指摘する声が高まっていた。「2016年の『週刊新潮』で報じられたガソリン代不正計上、2017年の『週刊文春』で報じられた弁護士・倉持麟太郎氏(42)との不倫疑惑、2021年に同誌で報じられた議員パス不正利用などがありましたが、山尾氏からはこれまで十分な説明がなされていませんでした。参院選出馬への疑問や、改めて会見を求める声が広がっていたのです」(政治部記者)
そうした状況下で、山尾氏は6月10日昼にX(旧Twitter)で「真摯にお伝えしたいと思います」と投稿した後、記者会見に臨んだ。この会見は、山尾氏を擁立する国民民主党にとっても、世論の動向を見る上で重要な局面だった。
山尾志桜里元衆院議員 公認取り消し発表 国民民主党
不倫疑惑への釈明と質疑応答
会見冒頭、山尾氏は過去の3つの問題について釈明し謝罪を行った。しかし、特に追及が集中したのは、弁護士・倉持麟太郎氏との不倫疑惑だ。この疑惑は、倉持氏の元妻が2018年3月の「週刊文春」に手記を寄せ、《この半年は、私にとって地獄のような日々でした》と綴っていたことに加え、元妻が2019年にうつ病を発症し、翌年10月に自死していたことが2021年に同誌で報じられるなど、深刻な背景があった。
山尾氏は疑惑報道当初「男女の関係はなかった」と否定していたが、今回の会見でも改めて「8年前に申し上げたことが事実」だと繰り返した。さらに、相手方の元妻が自死したことについては「私は事情を存じ上げません」と言い切った。
「真摯なご指摘」と回答回避の姿勢
会見全体を通して印象的だったのは、山尾氏が疑惑に関する発言を記者から求められるたびに、「大事なご指摘」という表現を何度も用いたことだ。しかし、この“枕詞”の後には必ず、「お話させていただくのは、控えさせてください」「新しくその件についてお話をさせていただくことは勘弁いただきたい」「いろいろな立場の方にご迷惑をおかけすることになる」といった回答回避の言葉が続いた。肝心な疑惑の詳細については、最後まで具体的に踏み込むことはなく、質疑応答は平行線をたどった。
一方で山尾氏は、「人権外交や司法外交の場で日本が存在感を発揮する。これが世界のためであり、間違いなく日本のためになって、国民の命と財産を守ることになる……。そういった国作りに向けて汗をかかせてもらいたい」と政策目標についても語った。しかし、疑惑に関する回答姿勢には、X(旧Twitter)などで以下のような指摘が上がった。
- 受け止めると言って聞かれた疑惑や批判には答えない。斎藤知事の対応と重なって見えて見えます
- 既視感ありすぎる 西の斎藤 東の山尾志桜里みたいな会見
- 山尾の会見観てて既視感が凄かったんだけど あれだ「斎藤元彦」と一緒ののらりくらりすっとぼけ戦法だ
兵庫県知事との比較と問われる「真摯さ」
政治部記者は、今回の山尾氏の会見対応について、兵庫県を巡る問題で批判を浴びている斎藤元彦県知事(47)との類似性を指摘する。「2021年に一度政界を引退された山尾さんは、この4年間を『いち国民として国政を見てきた』と述べました。国政を目指す立場なら、地域行政にも目を向けているはずです。そうであれば、兵庫県問題を巡る斎藤元彦県知事の会見の様子も見ていたでしょう。山尾氏の、質問を『大事なご指摘』と丁寧に応じながらも、その実、回答を避ける姿は、斎藤知事が『ご指摘は真摯に受け止める』と繰り返しながら、様々な問題に正面から答えない姿勢と類似しています。斎藤知事もその対応で批判を浴びているわけですから、山尾氏も国政を目指すのであれば、国民に対し、本当の意味で“真摯”に応じる必要があったのではないでしょうか」。
出馬会見での釈明と質疑応答が、わずか一日で公認取り消しという結果に繋がった形だ。政治家としての説明責任をどのように果たすのかが改めて問われている。