2026年春卒業予定の大学生・大学院生を対象とした採用選考が本格化する中、企業にとって最大の関心事は、内定を出した学生が無事に入社し、定着し、戦力となってくれるかという点です。近年、新卒社員が早期に退職するケースが増加傾向にあり、その背景にある理由に注目が集まっています。
新卒の早期退職の実態：入社2ヶ月以内の動向
退職代行サービス「モームリ」を管理するアルバトロス社が実施した2024年度新卒入社者1814人の退職代行利用者調査によると、退職者のうち、4月中に退職した利用者が15.4%、5月中に退職した利用者が14.1%でした。これは、入社からわずか2ヶ月以内に約3割（29.5%）の新卒社員が退職を決断している計算になります。このデータは、新卒の早期離職が無視できない規模で発生している現実を示しています。
新卒早期退職の動向を示すイメージ
最も多い退職理由：「働く現実」と「事前の説明」の乖離
同調査では、入社後の時期別退職理由も分析しています。特に4月から6月にかけての早期退職の理由として最も多かったのが、「入社前の契約内容・労働条件と勤務実態の乖離」であり、全体の47%を占めています。これは、入社前に企業から説明された労働条件や業務内容、働き方などが、実際の職場で大きく異なっていたと感じる新卒社員が多いことを意味します。
退職代行サービスの月別利用者数データ（2024年度新卒）
具体的なケースから見る「話が違う」理由
退職理由として挙げられた具体的なコメントからは、「乖離」がどのような形で現れるのかが見えてきます。
美容関連の企業に入社直後に退職した女性は、「会社説明会で聞いたことと全然ちがい、細かい説明もなく、身だしなみなど自分の好きなことを制限され、凄く嫌悪感を抱く言い方で、入社式にも出させてももらえなかった」と述べています。事前のイメージと異なる厳しい規則や配慮のないコミュニケーションが入社意欲を削いだ例です。
また、4月に建築・建設関連の企業を退職した男性は、「入社前に『土曜は基本的には休み。ただ祝日で平日が休みの場合は土曜出勤になる』と聞いていた。実際入社したら、土曜日も通常出勤で休みは日曜だけだった」と、休日に関する説明との違いを挙げています。さらに、「充実した研修制度あり」と公式サイトに写真付きで紹介されていたにもかかわらず、「研修なしで入社式翌日から現場に行かされた」と、研修体制の不備も早期退職の理由としています。
早期退職の原因はどこに？企業側の課題
これらの事例からわかるように、新卒入社者が早期に「話が違う」と感じてしまう原因を、入社する側の確認不足のみに帰することは困難です。企業側にも、少なくとも採用説明や労働条件の提示、研修体制に関する説明が不十分であったり、実態と異なる情報を提供したりしている問題がある可能性は否定できません。早期退職の最大の理由である「乖離」は、企業側の取り組み次第である程度予防しうる性質のものであり、採用活動や入社後のフォロー体制における改善の余地が大きいと言えるでしょう。
【参考資料】
- 退職代行のモームリ（運営：アルバトロス社）による2024年度新卒入社者の退職代行利用に関する調査結果
