昨年10月、大田区内のマンションで当時6歳の女児にわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつの罪に問われている田中元被告(51)の第2回公判が5月30日に開かれた。公判では、無罪を主張する被告の「言い分」に対し、検察官や裁判官が厳しく追及。また、被害者の父親が出廷し、事件後の娘の状況や被告への怒りを陳述した。初公判で被告は、女児の胸に触れた行為は無断侵入の発覚を恐れて女児を押した際に偶然当たったものであり、わいせつな行為はしていないと主張していた。
被告の主張と検察の追及
田中被告は、建物の屋上から景色を見るためにマンションに無断で侵入したと説明。エレベーターに一緒に乗り合わせた女児が降りた後もついてきたため、無断侵入がバレるのを避けようとして、「ついてこないで」という意図で左肩を押した際に胸に手が当たった可能性があると主張した。
これに対し、検察官は被告の行動の不合理な点を追及した。11階で降りた女児に対し、なぜわざわざ「降りたら階段に行くね」と声をかけたのかを問われると、被告は屋上に行くことが女児に知られるのを避けるため、一度11階で降りてから階段で移動し、エレベーターに乗り直そうと考えたと説明。「怪しまれないように言った」と述べた。しかし、検察官が「『降りたら階段に行くね』と言えば怪しまれないと思ったのか」と重ねて問うと、被告は「無断侵入が発覚しにくいかと思いました」と曖昧に答えた。さらに、団地には多くの人が出入りしており、女児が全員の顔を知っているわけではない中で、なぜ自身が怪しく見えたと思ったのかと問われると、「エレベーターの前でそわそわしたり、周りをキョロキョロ見回したり、怪しく見えたかなと思いました」と述べた。
供述調書に関する弁解
当初の供述調書の内容が真実ではないと主張している点について、検察官はなぜ嘘の弁解をしたのか質問。被告は逮捕された際に事件のことを思い出せなかったが、警察から「こうやったんじゃないか」と繰り返し追及され、嘘の弁解をしてしまったと釈明した。
裁判官からの質問
続いて、裁判官からも被告へ質問があった。なぜ景色を眺める場所としてこの団地を選んだのかと問われた被告は、約30年前に花火大会がきれいに見えた場所だからだと答えた。また、無断侵入がバレることをそこまで恐れていた理由を問われると、「周りの人にどう見られているか」「『ここに住んでいるのか』などと聞かれたらどうしようか」という点が気になったためだと述べた。最後に、裁判官が「小さい女の子に話しかけるほうが、周りから警戒されると思いませんでしたか」と問うと、被告は「そのように思います」と答えた。
不同意わいせつ公判での被告人、検察官、裁判官 イメージ図
被害者父親の意見陳述
論告弁論に先立ち、被害者であるAちゃんの父親が意見陳述を行った。証言台に座った父親は、被告人席に座る田中被告を一瞬にらみつけ、事件後の娘の深刻な精神的・身体的変化について詳細に述べた。娘は事件後、明らかに様子が変わり、精神的なストレスから体調を崩しやすくなり、現在も通院していること、日常的に独り言が増え、夜眠れない日が増えたことを語った。
さらに、事件によって家族が受けた影響にも言及。事件現場から自宅が近かったため、引っ越しを余儀なくされたこと。娘にとって楽しい思い出が詰まった大事なTシャツも、事件の記憶と結びついて着られなくなり、廃棄せざるを得なくなったことを明かした。
父親は田中被告に対する強い怒りをあらわにし、「被告人は当時6歳であった娘に対して、卑劣な行為をしたものと考えております。しかし被告人は、この裁判において謝罪も反省もせず、不合理な言い訳を続け、無罪を主張しております」と述べた。そして、「私はこのような被告人が更生することはないと思いますので、一日も長く刑務所に入れてもらいたいと思います」と厳しく訴えた。
検察・弁護側の論告弁論
続く論告弁論で、検察官は被害者Aちゃんの供述は具体的で信用できる一方、被告人の弁解は不合理で信用できないと指摘。さらに、被告には再犯の恐れが大きいとして、懲役2年6ヵ月の実刑を求刑した。
一方、弁護人は、被告が逮捕時に警察の追及によってとっさに嘘の弁解をしてしまい、それが真実からかけ離れた供述調書になったと主張。公判廷での被告の供述こそ、十分に記憶を喚起された内容であり信用できるとした。その上で、わいせつ行為自体が存在しないか、または故意を欠くとして、被告の無罪を主張した。
最終陳述と今後の焦点
最終陳述で、田中被告は改めて「私は、『ついてこないで』という意味合いで押さえただけで、決してわいせつなことをしようと思ったわけではありません」と述べ、無罪を主張した。
検察官は論告の中で、「仮に無断侵入の発覚を恐れていたのだとしても、6歳のAが被告人を無断侵入と判断できるはずがなく、むしろAに話しかけることで不審さを増している」とも指摘しており、被告の弁解の信用性を改めて否定した。
裁判の焦点は、被害者Aちゃんの供述と被告の供述のどちらがより信用できるかという点に移っている。判決は6月25日に言い渡される予定だ。
出典:FRIDAYデジタル via Yahoo!ニュース