インド飛行機事故、死者241人の中から唯一生還した英国籍男性の証言

インド西部アーメダバードで12日に発生したエア・インディア機の墜落事故では、乗客乗員241人が死亡しました。この極めて悲劇的な出来事の中、唯一生還したイギリス国籍の男性が明らかになり、注目を集めています。生存者は、ロンドン行きのボーイング787型機の座席11Aに座っていたヴィシュワシュクマル・ラメシュ氏です。事故は航空機が離陸した直後に発生しました。

奇跡的な生還と家族の戸惑い

ラメシュ氏の兄、ナヤン・クマール・ラメシュ氏はBBCニュースに対し、ヴィシュワシュクマル氏自身も「どうやって助かったのか」、そして唯一の生存者としてどうやって機体から脱出したのか「分からない」と話していることを明かしました。ナヤン氏は、弟が無事だったことに「本当にうれしい」と喜びを述べた一方で、同じ便に搭乗していたもう一人の兄弟、アジャイ氏の安否を深く案じていると語りました。「事故のことを聞いた瞬間、私たちは皆、ただただ衝撃を受けた。言葉も出なかった」とナヤン氏は当時の心境を振り返ります。「本人もなぜ助かったか分からず、私たちに電話してきたときも、ただ『アジャイを探して、アジャイを見つけて』と、もう一人の兄弟のことばかりを気にかけていた。今の彼にとってはそれがすべてだ」と伝えました。別の親族「ジェイ」はPA通信の取材で、「顔にはけががあり血まみれだったが、今は元気だと思う。ただ大きな衝撃を受けている様子だった」と話しています。

犠牲者の状況と生存者の回復

エア・インディアの発表によると、ラメシュ氏を除く他の乗客および乗員は全員が死亡しました。犠牲となった乗客の国籍は、インド169人、イギリス53人、ポルトガル7人、カナダ1人です。事故現場周辺でソーシャルメディアに共有された映像には、煙が立ち上る中、ラメシュ氏が救急車に向かって歩く痛ましい様子が映し出されていました。

インドの病院でアミット・シャー内相と面会する生存者ラメシュ氏インドの病院でアミット・シャー内相と面会する生存者ラメシュ氏

その後、ラメシュ氏が病院のベッドで、インドのアミット・シャー内相と面会している映像も公開され、彼の生存が改めて確認されました。ラメシュ氏を治療した医師、ダヴァル・ガメティ氏は彼の状態について、「彼は混乱していて、全身に複数のけがを負っていた。しかし、命に別状はないようだ」と語り、一命を取り留めていることを明らかにしました。インドのメディアによると、ラメシュ氏は自身の名前と座席番号が記載された搭乗券を示したと報じられています。

ラメシュ氏の経歴と事故発生の背景

ラメシュ氏はインド生まれの実業家で、2003年からイギリスに在住しています。妻と4歳になる息子がいます。同便はアーメダバードの空港を現地時間の午後1時39分に離陸しました。しかし、離陸から1分もたたないうちに管制塔に遭難信号を発した後、反応が途絶え、グジャラート州アーメダバードにある医科大学の構内にある宿泊施設に墜落しました。地上での死者数は現時点では明らかになっておらず、また、墜落の原因も依然として不明のままです。複数の航空専門家はBBCに対し、事故機が離陸した際の翼のフラップに技術的な問題があった可能性を示唆しています。BBCが検証した別の動画には、機体が急激に降下し、地面に激突すると同時に大きな爆発が起きる、事故の凄惨な瞬間が映し出されていました。

今回のエア・インディア機墜落事故は、241人もの尊い命が失われた極めて悲劇的な出来事です。その中で、ヴィシュワシュクマル・ラメシュ氏が奇跡的に一命を取り留めたことは、事故の衝撃の大きさを改めて浮き彫りにしています。現在、事故原因の究明に向けた詳細な調査が当局によって進められており、一日も早い原因特定とその公表が待たれます。

[出典]
BBC News (元記事: British man is only passenger to survive India plane crash)
PA通信