福岡市の小学校で提供された給食の写真がSNSに投稿され、「から揚げ1個だけ」と大きな波紋を呼んでいます。ネット上では「寂しすぎる」「貧相」「刑務所より豪華」といった批判が相次ぎ、給食の見栄えが議論の的となりました。かつては地産地消の豪華給食で注目された福岡ですが、物価高騰や給食無償化といった社会情勢が、給食現場に変化をもたらしているのでしょうか。この一件について、福岡市教育委員会に取材しました。
福岡市教育委員会の説明
この件について、福岡市教育委員会給食運営課の担当者が取材に応じました。担当者はまず、SNSで給食の写真を見た人々の「寂しい」「貧相だ」といった反応について、「見栄えの部分には考えが至っておりませんでした」と、配慮不足を認めました。しかし、提供された給食の量が極端に少ないわけではなく、福岡市が定める1食あたりの栄養基準、約600キロカロリーは満たされていると強調しました。特に批判の対象となったから揚げは、1個あたり60グラムあり、これは一般的なサイズのから揚げおよそ2個分に相当するボリュームだと説明しました。さらに、味噌汁も具材が豊富で、野菜4種類に加え、わかめや厚揚げが入っており、実質的に副菜の役割も兼ねる献立であったと補足しました。
福岡市の小学校で問題となった、皿にから揚げが1個だけ乗った給食の写真。ごはん、味噌汁、から揚げが見える。
このような献立の組み合わせには、給食提供現場における現実的な理由がありました。一つは調理工程や配膳の効率化です。給食室ではから揚げを生肉から味付け、揚げるまで全て手作りしています。60グラムという大きさにすることで、調理の手間を効率化できたといいます。もう一つは、食中毒発生のリスクを極力避けるという重要な配慮です。生肉を扱うエリアの近くで、サラダや和え物など、火を通さない、あるいは加熱時間の短い食材を使った副菜を作ることは、衛生管理上、高いリスクを伴います。そのため、生肉を扱う日は、全ての食材がしっかりと加熱される献立にする必要があったと説明しました。また、写真でから揚げが大きなお皿に「ポツンと」見えてしまった点については、学校に備え付けられているお皿が3種類しかなく、カレーなどにも使う大きな平皿を盛り付けに使ったためだと明かしました。担当者は改めて、「そこに考えが至っていませんでした」と、見栄えへの配慮の必要性を認めました。
福岡市の別の日の給食の写真例。大きな皿にソーセージ2本とスープが盛り付けられており、量が少なく見える。
SNSで批判された給食について、福岡市教育委員会は、栄養基準は満たしており、調理効率や食中毒防止のための献立上の工夫があったと説明しました。一方で、見栄えへの配慮が不足していた点は認めています。今回の騒動は、物価高騰などが進む社会情勢の中で、子供たちに安全で質の高い給食を提供し続ける現場の苦労と、限られたリソースの中での難しい判断を示唆していると言えるでしょう。